■さまざまな進路

 学生のテン・シンさん(22)は、「ビデオゲームは趣味だったし、心底はまっていた。これは新たな産業だ。将来性があると思う」と語った。週に少なくとも20時間はゲームをしているというシンさんは、プロのeスポーツ選手になるには年を取り過ぎているかもしれないと不安を抱いているが、コーチにはなれる可能性があると感じている。

 シンさんが通うeスポーツコースは3年間で修了する。1年目の授業はゲームが半分で残りの半分は業界で成功するための理論を学ぶ。

 1年目が終わるときに学生は2グループに分けられる。優秀なゲームプレーヤーはプロの競技者になるための訓練に進み、その他の学生たちはイベント企画や競技の振興、コーチなどeスポーツ関連の技能を身に付ける。

 年間授業料は約1万3000元(約22万円)と中国ではかなり割安だ。学校代表チームのメンバーになった優秀なプレーヤーは授業料の支払いを免除される。同校はeスポーツの学生を1000人にまで増やしたい意向だ。

■五輪正式種目にも?

 この10年足らずの間にeスポーツをめぐる状況は様変わりした。当時、若者たちのインターネット利用時間があまりにも長いことを懸念した政府はネット中毒を臨床的障害に指定し、利用を制限する法案まで作成した。

 今日では、中国は世界の主要なeスポーツ市場の一つとなっている。昨年11月に2008年の北京五輪で使用された「鳥の巣(Bird's Nest)」こと北京国家体育場(Beijing National Stadium)で開催されたオンラインゲーム「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)」世界選手権の決勝には4万人を超えるファンが詰めかけた。

 2022年に浙江(Zhejiang)省杭州(Hangzhou)市で開催されるアジア競技大会(Asian Games)ではeスポーツが初めて正式種目になる予定となっており、推進派は五輪競技にも採用してもらおうと売り込みを図っている。

 中国の調査会社CNGによると、同国のeスポーツ産業従事者はすでに約5万人に達し、今後さらに26万人の雇用が見込まれるとしている。

 藍翔高級技工学校の他にも、eスポーツ講座を開設している大学は少なくとも2校ある。海外では、英国のスタフォードシャー大学(Staffordshire University)が、9月に3年制講座を開設する予定となっている。フィンランドとロシアのモスクワにもこうした講座を開設した大学があり、仏ナント(Nantes)にはeSport Academyという専門教育機関も存在する。(c)AFP/Ludovic EHRET