■欧州委員会は織り込み済みと動じず

 欧州への移民・難民流入は2015年がピークで以降は減少しているが、各加盟国の移民・難民受け入れ人数をめぐって、EUはかつてないほど深刻な政治危機に直面している。

 メルケル氏に対する批判派の多くは、メルケル氏がシリア難民に対し門戸開放政策をとったことがEUの政治的分裂のさらなる悪化を招いたと指摘する。

 だが、EUの政策執行機関である欧州委員会(European Commission)は、メルケル氏の退任表明がEUの機能不全を招くとの見方は否定している。ある関係者は「メルケル氏の決断は予想されていたことだ。彼女も見越していたことだし、それで何かが変わることはない。メルケル氏は今すぐ首相を退任するわけではない」とAFPに語った。

 米国でAFPの取材に応じたドイツ・マーシャル基金(German Marshall Fund)ベルリン事務所のスーダ・デビッド・ウィルプ(Sudha David-Wilp)副所長も、メルケル氏の退任決断は驚くべきことではなく、秩序正しく進められるだろうとの見方を示した。