【9月20日 AFP】中国の犯罪組織が南アフリカ沿岸でアワビを乱獲しているため、資源が記録的なペースで枯渇しつつあるとの報告書が18日、発表された。南アフリカの被害額は年間6000万ドル(約68億円)に上ると指摘している。

 野生生物の取引を監視・調査するNGO「トラフィック(TRAFFIC)」の報告書によると、南アフリカの沿岸部では過去18年間で少なくとも9600万個のアワビが密漁された。特に2016年は、1年間で960万個が乱獲され、20年以上に及ぶ監視の歴史の中でも「最悪の水準の密漁」だったという。

 アワビは絶滅の危機に直面しているが、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES、ワシントン条約)」の付属書からは2010年に削除された。

 中国の複数の犯罪シンジケートは、メタンフェタミン(結晶状覚せい剤)を報酬として、ケープタウン(Cape Town)のある西ケープ(Western Cape)州で地元のギャング組織にアワビを密漁させている。トラフィックによれば、こうした密漁は水産資源の採取制限を無視して行われている。

「国境をまたいだ複雑なネットワークと地元の犯罪組織によって加速する違法なアワビ貿易に、根深い社会経済的格差が拍車をかけている」と報告書は指摘。地元漁業者向けの採取制限をめぐる激しい争いとギャングの抗争により、人々がアワビ密漁に手を染める恐れがあると警告している。

 合法・違法を問わず、南アフリカで採取されたアワビの90%は香港に輸出されている。宴会や結婚式の祝宴で人気の高級珍味だ。報告書では、規制がきちんと整備されていないせいで、南アフリカから密輸出されたアワビは当局の監視を恐れずにをかいくぐって転売することも容易だという。(c)AFP