■「まん延」に対する警鐘

 ブルガリアの経済週刊誌「Capital」の推計によると、人口700万人足らずの同国では2017年に1億枚のスクラッチくじが販売された。

 また4月に実施されたギャラップ(Gallup)社の世論調査によると、何らかの形でギャンブルを行っているブルガリア人は推定57%に上ることが明らかになった。専門家らは、ブルガリアは地中海の島国マルタに次いでEUで2番目に大きな賭博産業を擁すると指摘している。

 賭博事業は利益が大きいという特徴があるのに加えて、同業界がタバコ関連業界よりも低い税率を享受しているという事実もある。ブルガリアは、EU加盟国の中で唯一、宝くじ事業を行う企業が利益の一部を慈善活動に寄付することが法律で義務化されていない。

 こうした現象を食い止めるため、一部の政治家からは対策を求める声が上がっている。

 与党「欧州発展のためのブルガリア市民(GERB)」のツベタン・ツベタノフ(Tsvetan Tsvetanov)副党首は、スクラッチくじ依存が「若者や社会的地位の低い人々の間でまん延」すると警告している。

 現行の法律に見られるずれは、賭博の宣伝についてのルールでも明らかだ。

 宝くじやスクラッチくじに関しては、厳密にはテレビコマーシャルが禁止されているが、くじに当たった人が最高20万レフ(約1300万円)の賞金を手に熱狂したり、いかにして毎朝コーヒーと一緒にくじを買い続けたかを語ったりするインタビューをテレビ局が放送することは禁じられていない。

 バレリ・シメオノフ(Valeri Simeonov)副首相は今年に入り、賭博に関する法律の改正を提案し、現在、議会で審議されている。

 改正案では、宝くじ抽選会や賞品、勝者などをテレビで紹介することを禁じる他、未成年者に対するスクラッチくじの販売禁止や一部売店に対する販売規制などが盛り込まれている。