エベレストで横行する「不必要な救助」、ヘリ利用で保険金搾取
このニュースをシェア
■セーフティーネット
ネパールのトレッキング業界は、2015年の地震で打撃を受けたが、近年は観光客も戻り始めている。
外国からの登山客に付き添いのガイドを提供する旅行業者は2000社以上あると考えられており、その多くは、カトマンズのほこりっぽい裏通りに、狭くみすぼらしい事務所を構えている。
エベレストのベースキャンプを目指す14日間のトレッキングツアーの料金は会社により幅がある。だが、複数の業界関係者によると、多くはコストを下回る1000ドル(約11万円)以下で提供されているという。
低価格ツアーを提供する会社では、登山客をヘリコプターで「救助」することで原価割れの分を補うようガイドらに指示しているとされる。ある匿名希望のガイドはAFPの取材に対し、「救助」しなければいけない登山客数のノルマが課せられていると打ち明けた。
その一方で、エベレストの高地で働く医師たちにとっては、重篤患者をより設備が整った病院に確実に搬送できるため、ヘリコプターの利用機会が増えたことは、より大きな安心感につながっているという。
英国人医師のヘレン・ランドフィールド(Helen Randfield)氏は、「医師としては、ヘリコプターというセーフティーネットが出来て良かったと考えている」と話す。ランドフィールド氏が働く小さな診療所では、天候がおだやかな春と秋に数多くの登山客に対応するという。
だが、誰をヘリコプターで搬送するのかを最終的に判断するのは医療関係者ではない。米国人医師のソニア・マリアーノ(Sonia Mariano)氏は、「ガイドもしくは登山客らの間で、救助が必要かどうかを判断している」と語る。マリアーノ氏は昨年、ランドフィールド氏と同じ診療所で働いていた。
救助の大部分は、事前に保険会社の承認なしに行われる。保険会社の連合会であるインターナショナル・アシスタンス・グループ(International Assistance Group)に救助サービスを提供するアルパイン・レスキュー(Alpine Rescue)によると、その割合は80%に上っており、搾取がされやすい仕組みになっているという。