■非現実的な期待

 ただ、全ての物議を醸す問題に静観の立場をとっていたわけではない。

 8月、バージニア州シャーロッツビル(Charlottesville)で白人至上主義を掲げる団体と反対派が衝突して死者が出た事件で、大統領がネオナチを直接非難しなかった際には、イヴァンカ氏は「社会にはレイシズム(人種差別主義)の場所はない」とツイートし、公然と非難した。

 そして、その数か月後、上院補欠選で、未成年に対するわいせつ行為に及んだ疑惑が浮上したロイ・ムーア(Roy Moore)候補をトランプ氏が支持した際にも、2人の関係にはひびが入った。

 しかし多くの国民が憤慨したのは、イヴァンカ氏が米俳優のレオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)とアル・ゴア(Al Gore)元副大統領との会談をセッティングしたにもかかわらず、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」からトランプ大統領が離脱を発表するのを止められなかったことだった。

 イヴァンカ氏自身も、自分が置かれている状況を理解している。

 イヴァンカ氏は、9月の英紙フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)とのインタビューに、「一部の人は私に非現実的な期待を抱いており、私の存在にはとんでもない重みがあり、米国民が選んだ大統領の信念、そして行動計画さえも変えられると思っている」と述べ、「しかし、そのようなことは起きない。私を批判する人たちにとっては、私が父をリベラルに転向させられなければ、私は失敗者なるようだ」と言葉をつづけた。

 イヴァンカ氏が在イスラエルの米大使館の移設を祝ったあと、もう一人の著名な「ファースト・ドーター」であるチェルシー・クリントン(Chelsea Clinton)氏は、かつて友人関係にあったイヴァンカ氏に同情する気持ちが無いことを明らかにした。

 チェルシー氏は英紙ガーディアン(Guardian)に対し、「彼女は立派な大人です。自分の意思で選択ができるはず」「私たちは、自分で選択したことに責任を持たないといけない」と語っている。(c)AFP/Michael Mathes