【12月2日 AFP】童顔のフイン・ティ・タイ・ムオイ(Huynh Thi Thai Muoi)さん(23)は、ほとんど面識のない男性と韓国で新しい生活を始めるため、ベトナムの田舎にある実家を出ることになった。これは賭けみたいなものだな、と不安がよぎったという。韓国語は話せないし、夫の年齢は自分の倍ほどもある。新居がどんなものかも分からない。それでも、ムオイさんは愛と新しい出発を求めていた。

 高校を中退したムオイさんは、いとこからの紹介で43歳の韓国人男性、キム・キョンボク(Kim Kyeong-Bok)さんと会った。いとこも韓国人男性と結婚している。ムオイさんとキムさんは、顔を合わせてわずか数日で結婚した。

 愛と、貧困からの脱出を求めるベトナム人女性の嫁ぎ先の国として、最も人気なのが韓国だ。ムオンさんのように韓国人男性の妻となったベトナム人女性は約4万人いる。彼女たちの多くは韓国についてKポップと映画くらいしか知らない。

 ムオイさんにとって、光州(Gwangju)での結婚生活は恵まれていた。「夫は私のことをすごく愛してくれています。思ってもいなかったくらいに」。言葉の壁はあるが、夫は買い物の仕方や料理を教えてくれ、近所にある外国人花嫁向けの公民館で友人をつくったらいいとも言ってくれているという。

 しかし、ムオイさんのような人ばかりではない。夢に思い描いた生活と違って失望し、離婚して帰国するベトナム人女性は多い。

「女性たちは自分の夫についても、韓国に移住して暮らすことについても、十分な情報を持っていない」。ベトナム人花嫁の主な出身地となっている南部カントー(Can Tho)市にあるNGO、韓国国連人権政策センター(KOCUN)のユン・シムキム(Youn Sim Kim)所長は話す。

 韓国統計庁(Statistics Korea)の2015年のデータによると、ベトナム人と韓国人の夫婦の5組に1組は離婚している。

 韓国で外国人花嫁が求められている背景には地方での「嫁不足」がある。結婚適齢期の韓国人女性たちは、急成長する都市部にキャリアを求めて移住。結婚は必須ではないと言う彼女たちにとって、地方部の魅力は薄れてきている。その結果、結婚相手を見つけにくくなった地方部の韓国人男性が、パートナーとしてベトナムのメコンデルタ(Mekong Delta)地域や中国の地方部出身の女性たちを迎えているというわけだ。

 世界銀行(World Bank)によると、韓国の1人当たり国内総生産(GDP)は2万7000ドル(約300万円)。中国の8000ドル(約90万円)を優に上回り、ベトナムに比べるとざっと12倍だ。