【10月2日 AFP】米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)で広がっている国歌演奏の際の選手たちの抗議行動は、第4週も引き続き行われ、国歌は起立して聞くよう求めたドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の言葉は無視された。それでも、史上かつてないレベルの抗議が行われた前週と比べ、その規模は小さくなり、リーグ全体でまとまりを失ったような印象があった。

 英ロンドン(London)のウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)で行われたマイアミ・ドルフィンズ(Miami Dolphins)対ニューオーリンズ・セインツ(New Orleans Saints)の試合では、ドルフィンズの選手3人が国歌演奏で膝立ちになった。

 アトランタ・ファルコンズ(Atlanta Falcons)対バッファロー・ビルズ(Buffalo Bills)の試合では、ビルズの選手数人が、ミネソタ・バイキングス(Minnesota Vikings)対デトロイト・ライオンズ(Detroit Lions)戦ではライオンズの選手2人が膝立ちになり、クリーブランド・ブラウンズ(Cleveland Browns)対シンシナティ・ベンガルズ(Cincinnati Bengals)戦ではブラウンズの数人が拳を突き上げるパフォーマンスを見せた。

 その一方で、ニューイングランド・ペイトリオッツ(New England Patriots)対カロライナ・パンサーズ(Carolina Panthers)戦、ダラス・カウボーイズ(Dallas Cowboys)対ロサンゼルス・ラムズ(Los Angeles Rams)戦などで抗議行動はみられなかった。

 ボルティモア・レイヴンズ(Baltimore Ravens)対ピッツバーグ・スティーラーズ(Pittsburgh Steelers)戦では、試合前の「団結の時」にレイブンズの選手が膝立ちになると、スタンドのファンはブーイングを浴びせた。国歌は両チームともに起立して聞いた。

 2016年に抗議行動を始めた、QBコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)が昨季まで在籍していたサンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)とアリゾナ・カーディナルス(Arizona Cardinals)の一戦では、フォーティナイナーズの約半数が国歌演奏の際に膝立ちになると、スタンドからはちらほらとブーイングも聞こえた。

 球団は声明で、目的は「声なき人のために声を上げること」だと話し「間違えないでいただきたいのは、われわれがこの偉大な国を愛し、表現の自由の権利のために多くを犠牲にした、軍隊のみなさまと退役なさったみなさまに大きな敬意を抱いているということです。われわれは、この国とすべての国民のために最善のことを熱く求めています」と訴えた。

 ドルフィンズ対セインツ戦を生放送したフォックス・スポーツ(Fox Sports)は、膝立ちになるドルフィンズの選手たちの引きの映像を短く紹介するにとどめ、そのほかの試合では、事前の発表通り演奏の場面を放送しなかった。

 この抗議は、アフリカ系アメリカ人が警察に射殺される出来事が相次いだことを受けてキャパニックが始めたもので、前週にはNFL全体で150人以上の選手が国歌演奏の際に膝立ちになったり、起立を拒否したりした。

 すると、人種差別に抗議する選手を「クソ野郎ども」と呼び、選手やチームのオーナー、リーグ関係者に怒っていたトランプ大統領や一部のファンは、この行動を非難し、国歌と米軍をおとしめるものだと主張した。

 トランプ大統領は30日にもこの問題を取り上げ、ツイッター(Twitter)に「何より肝心なのはNFL選手が明日、そして今後もずっと起立し、国歌のためにプレーすることだ。国旗とわが国への敬意を見せろ!」と書き込み、選手に国歌演奏中の起立を求めていた。

 この問題をめぐっては、米国一の人気スポーツのファンの間でも意見が真っ二つに割れており、CBSニュース(CBS News)が行った世論調査によると、米国歌演奏中の抗議行動に「反対」と回答した人は52%、「賛成」と回答した人は38%だった。(c)AFP