【3月23日 AFP】スマートフォンで精子の質を分析し、不妊症に関する検査結果を数分以内に通知できる機器を開発したと米国の研究チームが22日、発表した。

 不妊に悩まされているカップルは、世界で4500万組以上に上るが、そのうちの40%以上は、精子の質が関係しているとされる。

 米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)に発表された研究論文によると、この新たな機器は、自らの精子を自宅で簡単・安価に検査できるようにすることを目的としているという。

 論文の共同執筆者で、米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(Brigham and Women's Hospital)の医師ハディ・シャフィエ(Hadi Shafiee)氏は「今回の研究では、男性不妊の検査を家庭用の妊娠検査薬と同じように簡単で安価にするための解決策の考案を目指した」と語る。

 精子の質を調べる検査では「病院の採取室で精液サンプルを提供する必要がある。この状況では、ストレスを感じ、恥ずかしさや悲壮感、失意を経験することが多い」とシャフィエ氏は指摘する。

 だが、新たに開発された検査法では「希釈や洗浄を施していない精液サンプルの映像を、5秒とかからずに分析することが可能」だと説明した。

 論文によると、この検査法では、スマートフォンに接続できる光学アタッチメントと、精液サンプルを取り込むための使い捨て器具を組み合わせて用いるのだという。

 研究チームは、米マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)不妊治療センターの精液標本350個を対象に試験を行った。

 その結果、このスマートフォンを使った精子検査機器は、異常と判断される精液サンプルを98%の精度で検出できた。判断基準は、精子の濃度と運動性に関する世界保健機関(WHO)の基準値に基づいた。機器に使用した材料は、4.45ドル(約500円)でそろったという。

 論文の共同執筆者で、マサチューセッツ総合病院不妊治療センターのジョン・ペトロッツァ(John Petrozza)所長は、「精子に関する臨床現場即時検査(POCT)を消費者やリソースが限られた保健医療施設に提供できるようになれば、それはまさしく大変革をもたらすものだ」とコメントした。

 この機器は、まだ一般に公開されてはおらず、試作品の段階にある。研究チームは、さらに試験を重ねた後、米食品医薬品局(FDA)に認可申請する予定だ。(c)AFP