【2月13日 AFP】黒いニカブの隙間からにらむような目を覗かせた女性のイラストに、「野放しの帰化」を拒否するよう有権者に呼びかけるスローガン──。スイスで12日に行われた国民投票を前に国内各地に貼り出されたポスターが、物議を醸している。

 国民投票は移民3世の市民権取得手続き簡素化の是非を問うものだったが、ポスターの真の狙いはスイスに流入するイスラム教徒の増加を懸念する人々に対する「恥知らず」なアピールだと、非難の声が上がったのだ。チューリヒ(Zurich)で広告代理店を経営するピウス・ワルカー(Pius Walker)氏は、「非常に恐ろしいことがこの国で起きている」と語る。

 12日に実施された国民投票では、本人がスイスで生まれ、祖父母のいずれかがスイス生まれかスイスの在留資格を有する場合、スイスの旅券(パスポート)を申請・取得する際の煩雑な手続きを簡素化する法案の是非が問われた。スイス移民当局の調査によれば、この移民3世の定義を満たすのは約2万5000人で、うち6割近くがイタリア系だ。

 だが、法案に反対してきた右派政党「スイス国民党(SVP)」が懸念しているのはイタリア系ではない。

「1世代、2世代のうちに、この『3世』という外国人は一体誰になるのか」と、SVPのジャンリュック・アドール(Jean-Luc Addor)議員は党公式ウェブサイトへの寄稿で書いている。「『アラブの春(Arab Spring)』の申し子となり、サハラ以南アフリカや『アフリカの角(Horn of Africa)』、シリアやアフガニスタンの出身者になるのではないか」