■欧州・新右翼広告のカリスマ、次の狙いはドイツ?

 問題のニカブのポスターの広告主は、表向きにはSVPではなく、「市民権取得促進に反対する委員会」という団体だが、この団体はアドール氏ら多くのSVP幹部が後援している。また、SVPは政策広報が差別的だとの非難をたびたび受けており、2009年の国民投票ではSVPの広報の効果で、イスラム教のモスク(礼拝堂)に付属するミナレット(尖塔)の建築禁止案が可決された。

 ベルン大学(University of Bern)政治学研究所のソフィー・ギニャール(Sophie Guignard)氏によれば、イスラム教徒を「悪」として描くSVPの広報活動は、スイス政治の主流では「容認できるもの」とみなされてはいない。ほとんどの政治家やジャーナリストは、ニカブのポスターを「イスラム教徒に対する激しい攻撃」と受け止めているという。

 ただ、だからといって広告に効果がないというわけではない。

 ニカブのポスターは、チューリヒ(Zurich)を拠点とする広告代理店ゴールAG(Goal AG)が制作した。経営者のアレクサンダー・ジーゲルト(Alexander Segert)氏について、英経済紙フィナンシャル・タイムズ(Financial TimesFT)は昨年12月の記事で「欧州・新右翼の広告界のカリスマ」と紹介している。

 FT紙によれば、ジーゲルト氏はこれまでSVPのほか「オーストリア自由党(Freedom Party of Austria)」など欧州の国家主義政党や極右政党の広告を広く手掛け、最近ではドイツ右派へのビジネス拡大を狙っているという。(c)AFP/Ben Simon