■うま味が増し、鮮度も長持ち

 ゴム長靴に防水のつなぎ姿のケルダビドさんは、夜明け前にキブロン(Quiberon)港から漁に出る。ベリル(Belle-Ile)島周辺で、メルランやその他のタラ科の魚を狙う。

 ケルダビドさんの全長9メートルの漁船は、生け締めの主な道具である手かぎの名にちなんで「ミヤビ(Miyabi)」と命名されている。釣り上げた魚を同船上で1匹ずつ、一撃で処理していく。

 はっとさせられるような自信に満ちた手つきで、魚の両目の間に手かぎを打ち込んだかと思うと、今度はその穴から金属製のくぎを通し、動脈を切断して脳に突き刺す。その後氷水にくぐらせて血抜きする。

 こうすれば魚の脊髄を含む神経系は数秒のうちに破壊されるが、心臓は動き続ける。完全に血抜きすることで身のうま味が増すだけではなく、鮮度も長持ちする。

 残酷に見えるかもしれないが、この手法を用いる人々の話では、魚を死ぬまでのたうち回らせておくのに比べれば苦痛が少ないのだという。

 フランス人シェフの間で生け締めした魚への関心が高まる中、さらにこれを広げていきたいと考えるケルダビドさんは現在、ロブスターを生きたままゆでる代わりに生け締めにできないか検討中だという。(c)AFP/Sandra FERRER