【1月12日 AFP】ヒヒは、母音のアエイオウに似た音を発することができるとの研究結果が11日、発表された。一部のサルが数百万年前から、言葉を発するための身体的能力を持っていたことを示唆する結果だという。

 米科学誌「プロスワン(PLoS ONE)」に発表された今回の研究成果は、ヒヒが母音に似た一連の音を発するのを可能にする舌と喉頭を持っていることを証明することで、言語がどのように始まり、進化したかをめぐり長年続いている論争に新たな局面を開くものだ。

 論文の共同執筆者で、フランス国立科学研究センター(CNRS)研究員のジョエル・ファゴ(Joel Fagot)氏は「人間以外の霊長類でこれを証明したのは、今回の研究が初めてだ」と指摘する。

 ファゴ氏は、AFPの取材に「今回の結果が示唆しているのは、ヒトの発話能力が非常に長い進化の歴史を有していること」と、現生人類のはるか以前に発生したことだと語った。

 CNRSが発表した声明によると、言語の起源は現代に比較的近く、過去7万年~10万年以内であると多くの科学者が考えているという。

 だが、言葉を話すために個々の音を明瞭に発音する調音能力は、2500万年前に生息していた「オナガザル上科」として知られる、ヒトとサルの最後の共通祖先までさかのぼる可能性があることを、今回の最新研究は示唆している。

 ヒト以外の霊長類や、旧人類ネアンデルタール(Neanderthal)人、現代人の1歳までの乳児などは、喉頭の位置が高すぎるため、発話に必要な、明確に区別された音を発することは不可能だとする説を、一部の研究者らは主張している。

 この説をヒヒで検証するため、研究チームは仏Rousset-sur-Arcの霊長類センターで飼育しているギニアヒヒの雄と雌計15匹の1300以上に及ぶ鳴き声を分析した。

 その結果、ヒヒが発する交尾期の声、うなり声、ほえ声、ギャーギャー騒ぐ声や、「ワフー」という2音節の音からも、母音のアエイオウに相当する音が検出されることを、研究チームは発見した。

 ヒヒにこうした能力があることは興味深いが、そのことは必ずしも、ヒヒが言葉を話せることを意味するわけではない。

 ヒヒは母音のように聞こえる音を発することができ、さまざまな状況に応じて明確に異なる鳴き声を上げることも可能だが、それらには人間の言語に含まれる無数の複雑な意味が欠如している。(c)AFP