【11月19日 AFP】米大統領選でドナルド・トランプ(Donald Trump)陣営の最高責任者として同氏を劇的な勝利に導き、次期米政権の幹部という絶大な権力を握るポストに上り詰めたスティーブ・バノン(Steve Bannon)氏(62)。同氏は自らをディック・チェイニー(Dick Cheney)元副大統領やSF映画「スター・ウォーズ(Star Wars)」シリーズのダース・ベイダ―(Darth Vader)といった悪役か、はたまた悪魔そのものに仕立てたいようだ。

 トランプ氏の苦戦を「黄金の投票箱」に変えてみせたバノン氏は、その手腕を買われて13日、トランプ氏率いる次期政権の首席戦略官・上級顧問に起用された。

 18日、ニューヨーク(New York)のマンハッタン(Manhattan)にトランプ氏が所有するトランプタワー(Trump Tower)で米芸能誌ハリウッド・リポーター(Hollywood Reporter)のインタビューに応じたバノン氏は「邪悪なことはいいことだ。ディック・チェイニー、ダース・ベイダー、悪魔。これが力だ」と語った。

 米投資銀行ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)出身でハリウッド(Hollywood)のプロデューサーの経験も持つバノン氏は、米国の保守主流派への反動とされる「オルタナ右翼」の聖域と評される保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース(Breitbart News)」を率いる。今年は白人至上主義者や反ユダヤ主義者との関係が取り沙汰され、物議を醸した。

 オルタナ右翼の運動は今回の大統領選で、トランプ氏への支持を表明した米白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」の元最高幹部デービッド・デューク(David Duke)氏らと共に、トランプ氏を熱狂的に支持した。

 しかしバノン氏はこのインタビューで、自分は人種差別主義者ではなく、急速に変化し現代化する世界の中で、米国の労働者階級の輝きを取り戻さなければならないと考えるナショナリストだと主張した。

「私は白人ナショナリストではなく、ただのナショナリストだ。経済ナショナリストだ。グローバル主義者たちがアメリカの労働者階級を滅ぼし、アジアに中産階級を生み出したんだ」

 ブライトバート・ニュースは、左翼が奉じる多文化主義や移民政策、政治的正しさ(PC)に嫌気が差した人を引き付けている。とはいえバノン氏は、自身が持つ反既成秩序の傾向は雇用問題に突き動かされたものだと説明した。

「(19世紀の米大統領アンドリュー・)ジャクソン(Andrew Jackson)のポピュリズム(大衆迎合主義)のような、全く新しい政治運動を私たちはつくり出そうとしている」「それは全て雇用に関連している」

 同氏は、米国の道路や造船所、製鉄所を再建するための「1兆ドル規模のインフラ計画を推進している男、それが私だ」と強調している。(c)AFP