【11月12日 AFP】米大統領選で勝利した共和党候補ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が示してきた外交政策の方向性が曖昧で不明瞭なことから、アジアにおける米国の影響力は今後低下するのか、それとも存在感が維持されるのか、見通しに暗い影を投げ掛けているとアナリストらが指摘している。

 トランプ氏は選挙期間中、中国を激しく攻撃して米国の「敵」とさえ呼び、中国に立ち向かっていくと誓った。しかし、はるかかなたの国々の小競り合いに巻き込まれることには関心がないとも述べ、米国は日本や韓国といった同盟国防衛のための支出にうんざりしていると語り、そうした同盟国は自前で核武装すべきだと言い切った。

 豪シドニー大学(University of Sydney)アメリカ研究センター(United States Studies Centre)のアシュリー・タウンゼンド(Ashley Townshend)氏は「トランプ氏は孤立主義カードを切って、(アジア)地域における影響力を分け合おうと中国と協定を結ぶ可能性もある」と言う。

 トランプ氏は、南シナ海(South China Sea)における中国の領有権主張から北朝鮮の核開発問題、台湾の将来に至るまで、米中関係の懸案であるアジアの地政学的問題について明確な処方箋をまったく示していない。

 オバマ政権のアジア重視政策にもかかわらず、ここ数か月、域内の同盟国が中国に接近する動きがみられる。今年就任したフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領の訪中しかり、中国との関係改善を視野に入れ始めたマレーシアしかりだ。トランプ次期大統領の下で米国が孤立主義に陥れば、東南アジアの発展途上諸国が米国よりも中国との関係を有望視する流れは加速する可能性がある。