■日韓への防衛負担増要求で広がる懸念

 日本や韓国に対して米軍による防衛支援への支出の増額を要求するトランプ氏の主張は、米次期政権が長年の同盟関係をどのように再編するのか懸念を抱かせる要因となっていると指摘するのは、オーストラリア国立大学(Australian National University)国家安全保障カレッジ(National Security College)のローリー・メドカーフ(Rory Medcalf)学長だ。「豪州のようなアジアのミドルパワー(中堅国)は今、二つの問題に対する防御策を必要としている。一つは中国パワー、もう一つが米国の予測不可能性だ」

 米大統領選の直前、トランプ氏の中国担当顧問と言われていたピーター・ナバロ(Peter Navarro)氏は米外交専門誌「フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)」電子版への寄稿で、トランプ氏が新大統領となれば中国との関係がどう変わり得るかをほのめかした。

 ナバロ氏はオバマ政権下でアジアに再び焦点を向けたことを「失策」と呼び、「弱腰のアジア重視政策が東シナ海(East China Sea)と南シナ海で中国の侵略を招いた」のであり、トランプ政権はこの問題に対処する上で、ある程度「力による平和戦略」を追求するだろうと述べた。

 トランプ氏は異例の大統領候補だった。そしてトランプ氏が来年1月に次期米大統領に就任した後、米中が関わる諸問題で取る政策の方向性はほとんど未知数だ。

 北京大学国際関係学院(Beijing University School of International Relations)の賈慶国(Jia Qingguo)院長は、多くの問いの答えがあまりに見通せない今、中国はどう進むべきか分からず困惑していると述べた。(c)AFP/Ben Dooley