【11月1日 AFP】米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー(James Comey)長官(55)は、民主、共和両党から「高潔な人物」と評価されてきた。だが、その評判にこたえようとした結果、投票日を目前に控えた大統領選に介入したとの批判を受ける状況に陥ってしまった。

 コミー長官は10月28日、議会指導部に送った短い書簡の中で、大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏が国務長官時代の公務に私用メールを使っていた問題について、一度は終結していた捜査に関連する可能性のある電子メールが新たに多数見つかったと公表。一方で、これらの電子メールに重要な内容が含まれているかについては今のところ不明で、捜査官らの調査結果を待っている段階だと認めた。

 これとは別にFBI職員に向けたメッセージでは、捜査再開の公表を決めた理由について、「ここ数か月、われわれの調査は終わったと繰り返し証言してきた以上」議会に知らせる「義務」があると感じたと説明している。

 これらの電子メールは、クリントン氏の側近の一人、フーマ・アベディン(Huma Abedin)氏の別居中の夫で、わいせつ問題を起こして下院議員を辞職したアンソニー・ウィーナー(Anthony Weiner)氏が使っていたノートパソコンから見つかったと報じられている。

 大統領選をクリントン氏と争う共和党候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は、新たなメールの内容が不明であるにもかかわらず、「ウォーターゲート(Watergate)事件以来最大の政治スキャンダルだ」と主張した。

 当のクリントン氏は、メールの存在を詳細な情報なしに公表したコミー長官の判断に「深い懸念」を抱いていると批判。民主党のハリー・リード(Harry Reid)上院院内総務はコミー長官に30日に送付した書簡で、同長官が自らの立場を利用して特定の候補に有利な状況を作り出したとして、「法律違反の可能性がある」と警告した。

 また、エリック・ホルダー(Eric Holder)前司法長官は、米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)に寄稿した論説で、コミー長官は「高潔さと信義」を備えた人間だとした上で、捜査再開の公表は「甚大な影響を及ぼしかねない深刻な過失」だと糾弾。司法省には、進行中の捜査についてはコメントしない、選挙が近づいている場合その結果に影響しかねない不必要な行動は取らない、という方針があると指摘した。