【9月15日 AFP】40度に迫る猛暑のインド首都ニューデリー(New Delhi)で、荷台にくくり付けた氷が解け出す前にその注文主に届けなければならないと、ラム・バブさん(52)は急いで自転車をこぎ始めた──。

 ニューデリーではバブさんら大勢の氷屋たちが何世代にもわたって、渋滞や道にできた穴、人混みに悪戦苦闘しながら小さな店に氷を届けてきた。

 バブさんは30年間ほぼ毎朝、卸売業者から買い入れた大きな氷のブロックを保冷用の茶色の袋でくるみ、自転車の荷台に固定。1日当たり約15~20キロを自転車で移動しながら、氷を送り届けている。主な顧客は、道路沿いにひしめく冷蔵庫のない飲食店だ。

 5人の子どもの父親であるバブさんは氷売りによって月およそ1万5000ルピー(約2万3000円)を稼ぐ。しかし冷蔵庫を持つ店が増えてきたため、収入は徐々に減っているという。

 友人や近所の人から親しみを込めて「アイスマン(氷売り)」と呼ばれているバブさんは、祖父の代からの家業であるこのきつい仕事に誇りを持っている。ただ、子どもたちは会社や工場勤めの方に興味を示しているという。

 バブさんは「子どもたちにとっては単純な仕事に思えるのだろう。だから後を継いでくれなくても責めはしないし、無理強いもしないよ」と語っている。(c)AFP