【9月7日 AFP】2018年W杯ロシア大会(2018 World Cup)の北中米カリブ海予選に臨むエルサルバドル代表が、自称ビジネスマンの男性から賄賂を持ちかけられていたことが明らかになった。ホンジュラス代表の最終予選進出を確実にするための工作だった可能性も指摘されている。

 カナダとの試合を翌日に控えた5日の夜、記者会見を開いたエルサルバドルの主将ネルソン・ボニージャ(Nelson Bonilla)は、リカルド・パディージャ(Ricardo Padilla)氏というビジネスマンとの会話を録音した音声を公開し、金銭を提示されたことを明かした。

 この人物は、かつてエルサルバドルのクラブチーム、アリアンサFC(Alianza FC)で会長を務めていたことが確認されている。一部報道によると、パティージャ氏はホンジュラスの富豪の代理で動いていたとされており、ボニージャが公開した録音の中では、選手一人につき2700ドル(約27万円)を支払うと提案している。

 北中米カリブ海予選は現在4次予選が行われており、エルサルバドルはメキシコ、カナダ、ホンジュラスと同じグループAに入っている。メキシコが勝ち点15を獲得してすでに最終予選進出を決めた一方で、エルサルバドルは勝ち点2で最下位。突破の残り1枠を勝ち点7のホンジュラス、同4のカナダが争っている状況にある。

 6日に行われる同予選の最終節では、ホンジュラスはメキシコと、エルサルバドルはカナダと対戦。問題の富豪は、メキシコがホンジュラスに、カナダがエルサルバドルにそれぞれ大勝し、カナダとの順位が得失点差で入れ替わることを恐れているのだという。

 地元紙ラ・プレンサ・グラフィカ(La Prensa Grafica)の報道によれば、パディージャ氏は「提案はこうだ。試合に勝てば、プレー時間1分につき30ドル(約3000円)を支払う。90分フル出場なら2700ドルだ。アリアンサではその額を支払っていた。それと同じだ。理解できたかね?」と話を持ちかけたという。

 パディージャ氏はさらに、引き分けなら1分あたり20ドル(約2000円)、0-1の敗戦なら15ドル(約1500円)を提示し、「そういう仕組みだ。だから1-0で負けた場合でも、それ以上に離されないようにすればいい。話は明快だろう?われわれが望まないのは大敗だ。これはホンジュラス代表チームのための行動だ」と話していた。

 一方、別の国内紙エル・ディアリオ・デ・オイ(El Diario de Hoy)の報道によれば、パディージャ氏は金銭を提示したことは認めたものの、背後にいるとされるホンジュラスの富豪の存在は否定している。

「私は誰の仲介もしていない。提案は提案だ。私は自分たちの代表がボコボコにされるのにうんざりしていたんだ。富豪の小ネタは冗談だよ」

 サッカーでは世界中で不正のうわさが絶えないが、今回の一件は新たなスキャンダルに発展する可能性がある。エルサルバドルは2013年にも騒動の中心となっており、4年にわたって八百長を繰り返していたとして、代表選手14人が永久追放になっていた。(c)AFP