【8月9日 AFP】より速く、より高く、より強く――。この五輪のモットーを現実のものとすべく、科学者たちも試行錯誤を繰り返している。ここでは現在開催中のリオデジャネイロ五輪に向けて、選手の成績を左右しうる近年の発見を紹介する。

■陸上競技―シューズ対裸足

 エチオピアのアベベ・ビキラ(Abebe Bikila、1960年のローマ五輪の男子マラソンで金メダルを獲得)、南アフリカのゾーラ・バッド(Zola Budd、1985年に女子5000メートルで当時の世界記録を樹立)が裸足で走って数十年、シューズを捨てるという斬新な発想は、陸上界の議論の的であり続けている。

 多くの選手が、シューズはその人の自然な足取りをゆがめ、走りの質を落とすと断言する。そして、裸足でのランニングに原点回帰する者もいれば、「ベアフットシューズ」を選ぶ者もいる。データによれば、人間の蹴る力がどんどん高まっていることも、けがの発生率を高める一因になっているという。

 スポーツ科学の専門誌に掲載された研究で、スペインのグラナダ大学(Granada University)とハエン大学(Jaen University)の研究チームは、裸足の方が負傷率は「大幅に」小さくなると主張した。人は、靴を履いているとかかとから着地しがちだが、裸足だと足の前や中ほどで着地するようになり、土踏まずが緩衝材になって衝撃を吸収するのだという。

 そして研究チームは、これまで裸足で走ったことのなかった30人以上のランナーを対象に、12週間にわたって裸足で練習を行ってもらった。すると地面の蹴り方が一変し、かかとから着地する走り方が矯正された。

 正しい走り方をすれば、裸足なら着地の衝撃は最小限になり、「従って、けがのリスクも低減される」と研究では結論づけられている。

 だからといって、何も考えずにシューズをロッカーにしまい込んでいいわけではない。一般道は小石やくぎ、ガラス片といったほかの危険でいっぱいだ。裸足で走るにも、やはりそれなりのコツはいるということだろう。