【7月13日 AFP】陸上のトラック競技で黒人選手が圧倒的な強さを見せ、水泳競技で白人選手の優位が続く理由は「へそ」の位置の違いにあることを示した研究結果が12日、英科学誌「International Journal of Design and Nature and Ecodynamics」に掲載された。

 研究を主導した米デューク大学(Duke University)のアンドレ・ビジャン(Andre Bejan)教授はAFPとのインタビューで「身体の重心にあるのがへそだ」と説明。身体全体における重心の位置が重要であることが分かったという。

 ビジャン教授らは、過去100年分の男子および女子の陸上100メートル種目と競泳100メートル自由形の記録を調べた。その結果、西アフリカ系選手のへその位置は、身長が同程度のヨーロッパ系選手よりも平均3センチ上にあった。この「隠れた身長差」とも言うべき違いが、陸上競技における優位性をもたらしているという。

「短距離走は『前に向かって落ちる』動きを続けるようなものだ。そして物体を落とす位置が高いほど、その物体のスピードは速くなる」(ビジャン教授) 

■へその位置が高ければ短距離、低ければ水泳に有利

 一方、競泳でヨーロッパ系選手が有利なのは、へその位置が低く、胴体が長いからだという。

「水泳は、選手自身が作り出した波に乗って前進していく動きだ。波が大きいほど速く前に進めるが、大きな波を作るには胴が長いほうが有利だ」(ビジャン教授) 

 教授によると、ヨーロッパ系選手の胴体は西アフリカ系選手よりも3%長く、競泳のスピードでは1.5%有利だという。アジア系選手はヨーロッパ系選手と同様に長い胴を持つが、身長が白人よりも低い分、不利になるという。

 スポーツにおける黒人と白人との能力差については人種差別的な観点が伴いがちなため、研究が避けられる傾向があったが、ビジャン教授らは人種ではなく、地理的な出自と生物学的な問題に着目してこの研究を行なった。(c)AFP/Karin Zeitvogel