【6月23日 AFP】インド中部の町ボパール(Bhopal)。実家に帰っていたサダフ・メムード(31)さんのもとに、夫から手紙が送られてきた。そこに殴り書きされたわずか3語に、彼女の心は打ち砕かれた。

 彼女の夫は、イスラムの古い慣習にならい、アラビア語で「タラーク、タラーク、タラーク」と書いてきた。タラークとは離婚するという意味で、これを突きつけられた瞬間、彼女たちの5年間の結婚生活は終わった。

「私は大きな衝撃を受けて完全に打ちのめされた。結婚直後から行き違いはあったけど、そこまでひどくはなかった」と、3人の子どもの母親でもある彼女はAFPに語った。

 メムードさんの他にも、夫からタラークの3語で離婚されたインドのムスリム(イスラム教徒)女性は数多い。そのメッセージは従来通り郵便で送られることもあれば、交流サイト(SNS)のフェイスブック(Facebook)や携帯電話向け人気チャットアプリ「ワッツアップ(WhatsApp)」が使われることもある。

 この慣習は多くのイスラム教国で禁止されている。インドは、公的には宗教色の薄い世俗主義国家だが、同慣習を法的に認めている数少ない国の一つだ。

「離婚通達は事前に何の警告もなく突然送られてきた」と、メムードさんは言う。彼女は今、夫の支援なしにどう生計を立てていくか苦境に立たされている。

 人口1億5500万人のイスラム教徒を含むインドの宗教的少数派は、ヒンズー教徒が多数を占めるこの国において、自分たちの宗教の自由を守るために慣習を重視し、それを私的に法制化している。

 しかし女性たちは、イスラム法「シャリア」に基づくタラークの慣習は誤用され、男性が簡単に家族を捨てることを可能にしていると訴える。

「女性は一般的に、この社会で二級市民の扱いを受けており、さらに宗教の誤った解釈によって差別されている」と、ムスリム女性の権利向上を助ける慈善団体「Bharatiya Muslim Mahila Andolan」で働くサディア・アクタール(Sadia Akhtar)氏は言う。