■セカンドインパクト症候群

 ボクシングのノックアウトは、頭部にダメージを受けやすいさまざまなスポーツにおいて氷山の一角だ。ラグビー、アイスホッケー、スキー、柔道、乗馬など、頭部に衝撃を受ける競技は数多く存在する。

 仏コンタクトスポーツ連盟は、ボクシングでは打撃を受けたことをすぐに理解できるが、ほかのスポーツでは頭部へのダメージが見過ごされる可能性が高いとしており、「サッカー選手もヘディングの数が多い。ボクシングにはレフェリーがいるが、ほかの競技で(選手が頭部に衝撃を受けて)プレーを中断する人はいない」とコメントしている。

 アリ氏が引退して以来、脳振とうを受けたアスリートは最低でも5日間は休むことが「セカンドインパクト症候群」を避けるためには重要だということが研究で分かっている。短期間で頭部に2度目の衝撃を受けることで重い症状に陥るセカンドインパクト症候群により、毎年男女を問わず多くのアスリートが致命的な障害を負っている。

 フランスのラグビー界は当面の対策として、2013年からプロ選手の神経を観察する制度を導入している。また、米国ではアメフト選手とアイスホッケー選手の頭部のけがは厳しくチェックされている。(c)AFP