【4月12日 AFP】米フロリダ州立大学医学部(Florida State University College of Medicine)の研究チームは11日、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)を引退した選手のうち、約43%に外傷性脳損傷(TBI)の兆候がみられ、衝突やタックルによる長期間の影響が懸念されるとする新たな研究結果を報告した。

 今回の研究では、40人の元NFL選手を対象に、脳の画像検査に加え、思考や記憶のテストを実施したという。

 著者のフランシス・コニディ(Francis Conidi)氏は、「これは存命している元NFL選手を対象とした、これまでで最大規模の研究であり、これらの選手に外傷性脳損傷があるという重要な物的証拠を示す最初のケースの一つである」と述べた。

「これらの選手たちにみられるTBIの割合は、一般人と比べてはるかに高い」

 今回の研究では、リーグで平均7年プレーした27歳から56歳の元選手を対象に検査が行われた。多くは、引退してから5年未満だという。報告によれば、元選手たちは脳振とうの経験が平均8回あるとしており、脳振とうと診断されるほどではない衝突も、約3分の1が経験しているという。

 拡散テンソル画像と呼ばれる精密なMRI検査で白質の水分子の動きを計測し、ダメージの度合いを診断したという研究結果は、米国神経学会(American Academy of Neurology)の年次総会に先立ち発表された。

「43%に相当する元選手17人の標準偏差が2.5と判明し、同年齢の健康な人々に比べ、値が低い結果となっている。これはTBIの証拠と考えられ、誤差率は1%に満たない」

「テストしたところ、思考スキルでは50%が実行機能に著しい問題を抱えており、学習もしくは記憶スキルでは45%、注意力と集中力では42%が同様の結果となった」

 現役生活が長い選手ほど、TBIのリスクが高い傾向にあるが、研究チームは脳振とうの回数と脳損傷の因果関係については立証していない。

 研究結果により、攻撃性、認知症、鬱(うつ)、自殺などに関連する慢性外傷性脳症(CTE)と呼ばれる脳の状態について、科学者の間で理解が進むとみられている。

 米国最大の人気スポーツであるアメフト選手に、脳損傷が蔓延しているという最新の証拠が明らかになったことにより、脳振とうの影響を理解していないとして批判されてきたNFLには、さらなる重圧がかかることになるとみられる。(c)AFP