【8月31日 AFP】2016年米大統領選挙の共和党候補に関する世論調査で不動産王のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏(69)の支持率が急上昇しているが、同氏の挑発的で反移民的な発言は次期大統領選で鍵を握るヒスパニック系有権者を遠ざける可能性がある。コンサルティング会社「Infoamericas.info」のパトリシオ・サモラノ(Patricio Zamorano)取締役は「トランプ氏がやっていることは自殺行為だ」という。

 トランプ氏は6月に選挙活動を開始して以降、共和党の候補者16人を差し置きトップに躍り出し、今週は2位のライバルに16ポイント差をつけて支持率28%を獲得している。

 しかし、トランプ氏にまつわる話題を独占しているのが移民問題だ。同氏は、米国入りするメキシコ移民は麻薬の密売や強姦(ごうかん)などの犯罪の源になっていると発言し、不法入国を防ぐためにメキシコ国境に「壁」を建設すると約束した。さらに米国に不法滞在する1100万人を強制送還することや、米国生まれの移民の子どもから米国籍を取得できる権利をはく奪することなどを方針に掲げている。トランプ氏はこれが正式な書類を持たない多くの移民を引き寄せているとみなしている。

 トランプ氏の歯に衣着せぬ話しぶりや、差別や偏見を是正すべきとする「ポリティカル・コレクトネス」の考えを拒む姿勢は、共和党の最保守派の多くの支持を勝ち取っている。予備選で最も積極的に動くのはこの層だ。しかし同時にトランプ氏は、有権者の10%を占める5400万人に達し、今も米国で急増するヒスパニック系の怒りとさげすみを誘ってもいる。米ギャラップ(Gallup)の最近の世論調査で、ヒスパニック系の間で最も人気がない共和党候補がトランプ氏だったことに驚きはない。

 共和党は12年の大統領選の際、同党候補だったミット・ロムニー(Mitt Romney)氏が、移民の「自主的国外退去」を提案し、民主党バラク・オバマ(Barack Obama)大統領の再選を有利にしてしまった過去がある。ヒスパニック系の世論調査会社ラティーノ・ディシジョンズ(Latino Decisions)によると、共和党候補が来年の次期大統領選で勝利するためにはヒスパニック票の47%の獲得が必要だ。これはロムニー氏が獲得したヒスパニック系の支持率の2倍であり、04年の選挙で再選したジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領が獲得した44%をも超えなければならない。サモラノ氏によれば「次期大統領選ではヒスパニック票を獲得することは必須」だ。

 米ジョージ・ワシントン大学(George Washington University)の政治学者、マイケル・コーンフィールド(Michael Cornfield)氏は、そうしたトランプ氏の姿勢は、それに挑む他の共和党候補がいないことと相まって、ヒスパニック系にとって共和党全体のイメージダウンにつながると述べる。「(共和党の)候補者も献金者も党の上層部も、トランプ氏に対する世論の反応に呆然としている。彼が流れを変え、ここまで残り続けるとは誰も予測していなかった」