【7月13日 AFP】トルコ中南部アダナ(Adana)県で、夫に繰り返し暴力を振るわれ、売春を強要されそうになったとして夫を殺害した妻が逮捕された。妻は自分の「名誉」のため犯行に及んだと主張している。

 10日の現地英字紙ヒュリエト・デーリー・ニューズ(Hurriyet Daily News)によると、逮捕されたチレム・カラブルト(Cilem Karabulut)容疑者(28)は警察への供述で、夫のハサン・カラブルト(Hasan Karabulut)さん(33)を自宅にあった拳銃で殺害したことを認めた。供述の中で同容疑者は、家族が女性を殺す「名誉殺人」を踏まえて「なぜいつも女が殺されなければならないのか?男も殺されたらいい。私は名誉を守るために殺した」と語ったとされる。

 この犯行動機はトルコのメディアで大きな注目を集めた。チレム容疑者は9日、手錠をかけられ婦人警官2人に伴われて裁判所に出廷したが、その際に英語で「過去よ、あらゆる教訓をありがとう。未来よ、私は準備できている」と書かれたTシャツを着用し、親指を立てる動作をするなど大胆な態度を示したため、さらに注目度が高まった。

 報道によると、チレム容疑者が夫を殺害したのは8日午後で、警察は容疑者自らの通報によって逮捕した。供述によると、チレム容疑者はこれまでハサンさんから繰り返し暴行され、売春婦になれといった暴言を吐かれていた。2人の間には1歳半の娘がいるが、事件当時、夫婦はすでに別居していた。ヒュリエト紙は、チレム容疑者が「いつも殴られていたので夫を殺した。夫によって売春や薬物犯罪をさせられたり、殺されたりするのではないかと不安だった」と語ったと伝えた。

 トルコ当局は女性に対する暴力が深刻な国内問題になっていることを認めており、中でも妻が夫や親族に殺される事例を重くみている。一方、妻が夫に暴力を振るうケースは極めてまれだ。非政府組織(NGO)の「女性への暴力に反対するプラットフォーム(Platform to Stop Violence Against Women)」によると、2014年にトルコで殺害された女性は286人、また今年は現時点で160人に上っている。(c)AFP