【5月8日 AFP】過去50年間に登場した音楽様式のうち、ヒップホップが最も世界を席巻したとする研究結果が6日、明らかになった。

 英国王立協会(Royal Society)のオンライン科学誌「ロイヤルソサエティー・オープンサイエンス(Royal Society Open Science)」に掲載された研究によると、米ニューヨーク(New York)のブロンクス(Bronx)で誕生したとされるヒップホップは、米ラッパーで俳優のLL・クール・J(LL Cool J)さんなどが人気を博した1991年に最高潮に達した。

 研究を率いた英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)のアーマンド・リロイ(Armand Leroi)氏(進化発生生物学)は、ヒップホップはどこからともなく現れ流行が爆発したと述べつつ「振り返ってみれば、ニューヨークやロサンゼルスのストリートといったヒップホップが生まれた地では80年代以降、ヒットチャートの水面下でずっと存在していたものが突然、主流に躍り出てあらゆるチャートを席巻した」と説明した。

 リロイ教授と英ロンドン大学クイーンメアリー校(Queen Mary University of London)で情報科学を研究するマシアス・モーチ(Matthias Mauch)氏は、アルゴリズムとコンピューター解析により、1960年から2010年までのポップミュージックの流行の変化を観察した。

 米国のヒット曲ランキング「ビルボード・ホット100(Billboard Hot 100)」に入った約1万7000曲を用い、特定のコードの登場頻度、楽器や声の種類、曲調が静かかエネルギッシュか、ボーカルが語っているか、歌唱のみかといった特徴を分析した。さらに各年で「平均的」とされた曲を異なる年同士で比較し、差異の程度を観察した。

 リロイ氏は、ある年とその翌年に流行る曲の大半は似ているが、時おり突然、傾向が大きく変わる「革命」が起きる年があるという。同氏によると、それが起きたのは過去50年間で3回で、1964年、1983年、1991年だった。

 このうち「曲にコードがなく、エネルギッシュなしゃべりを特徴とする」ヒップホップが流行した91年が最も大きな革命だったとリロイ氏はいう。1964年の革命では複数のスタイルが一斉に花開いた。ソウル、ロック、ドゥーワップなどだ。また、1983年にはニュー・ウェーブ、ディスコ、ハードロックが続々と出現した。

 モーチ氏は今回の研究について、ポップソングの進化に関する貴重な科学的データを提供するものだとしている。(c)AFP