■生活を支える屋台、街のエネルギー源にも

 屋台の規制には、混雑の緩和のほか、犯罪組織や当局の収賄行為を抑制するという目的もある。

 バンコク市によれば、登録されている屋台の数は2万軒。未認可で営業している屋台は全国にさらにたくさんあるという。タイ政府が2000年に行った調査では、最大40万人が首都の屋台で商売をしていた。従来の低所得者層に最近では中流層も加わり、数はさらに増えているとみられる。多くは、貧しい北東部から出稼ぎに来ている人々だ。

 タマサート大学(Thammasat University)社会行政学部で教えるナルモン・ニラスロン(Narumol Nirathron)氏は、混雑に関する規制は必要だが、屋台主たちにもっと配慮した柔軟な対応が求められていると主張する。「屋台を頼りにしている貧困層の生活への影響が懸念される。道は歩行者だけのものではなく、そこで生計を立てている人たちのものでもある」

 屋台は、所得格差の広がるバンコクのあらゆる層をつなぐ接点ともなっている。社会のさまざまな階級の人たちが屋台の食事を食べに来て、この街にエネルギーと多様性を吹き込んでいるのだ。

 クローントムで、仲間の屋台主たちが警察に何かを言われているのを見ながら匿名を条件に取材に応じたある店主は、規制はすぐに緩和されるだろうと語った。「警察が来たら、私たちは隠れる。そして彼らが去ったらまた店を出して売ればいい」(c)AFP/Preeti JHA