【3月10日 AFP】先月ロシアの野党指導者ボリス・ネムツォフ(Boris Nemtsov)元第1副首相が暗殺された事件はイスラム過激派による犯行だとする説について、ネムツォフ氏の友人の一人は9日、「不条理だ」と一蹴し、政治的な動機によるものだと主張した。

 捜査当局は先に、イスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)の絵を掲載したフランスの風刺週刊紙「シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)」に対する支持を表明していたために殺害されたという可能性について捜査すると発表していた。

 この説については、イスラム教徒が多く、1月には「シャルリー・エブド」によるムハンマドの絵の掲載に抗議する大規模な抗議デモも行われた北カフカスのチェチェン(Chechnya)共和国出身の容疑者が暗殺への関与を自白したことを受けて、その信ぴょう性が高まりつつある。

 これについてネムツォフ氏と共に反体制組織「連帯」を立ち上げたイリヤ・ヤシン(Ilya Yashin)氏はAFPに対し、「捜査の公式見解は不条理どころの話ではない。私は大統領府からの政治的命令を受けたものだと考えている」と訴えた。

 ヤシン氏はさらに、ネムツォフ氏が「イスラム教に対し否定的な発言をしたことは一度もない」と断言し、シャルリー・エブド本社で12人を殺害したイスラム過激派を非難したにすぎないとのべた。

■「最も恐れていたことが現実に」

 チェチェン警察で特殊部隊の副隊長を務めていたというザウル・ダダエフ(Zaur Dadayev)容疑者は8日、モスクワ(Moscow)で民間警備会社に勤務していたアンゾル・グバシェフ(Anzor Gubashev)容疑者と共に殺人の容疑をかけられた。両容疑者は他の3人の容疑者らと共に再勾留されている。

 モスクワの裁判所は、容疑者らがロシア刑法の金銭の授受を伴う殺人に関連する規定に基づいて取り調べを受けていると伝えられている。これは捜査当局がネムツォフ氏の殺人が依頼に基づくものであると認識していることを示唆するものとも捉えられる。

 ヤシン氏は、「私たちが最も恐れていたことが現実のものになりつつある。つまり殺し屋は逮捕されたが、黒幕は自由の身のままだということだ」と懸念を示した。(c)AFP