【3月4日 AFP】「自殺の名所の橋から飛び降りた私は、アシカに命を救われた」──米カリフォルニア(California)州サンフランシスコ(San Francisco)のゴールデンゲートブリッジ(Golden Gate Bridge)から2000年に飛び降り自殺を図り、ケビン・ハインズ(Kevin Hines)さんは今、自殺防止を呼び掛ける活動で飛び回っている。

 4日、訪問先のオーストラリアで取材に応じたハインズさんは10代のころ、精神疾患と鬱(うつ)に苦しんでいたが、33歳になった現在は精神衛生の向上を提唱し、世界各地で講演を行っている。

 ゴールデンゲートブリッジから飛び降りたハインズさんは水中に落ちた後、自分の下を何かが泳いでいるのを感じた。サメだと思い、脚を食いちぎられると思ってパニックに陥ったが、その生き物は円を描くように泳ぎながら、ハインズさんの体を何度も下から突き上げた。

 後になって、この日、橋の上で見ていたという男性から、それがアシカだったことを聞いた。アシカはハインズさんのそばに救助の船が近づいてくるまで、同じ行動を続けた。

 ハインズさんが助かった理由はもう一つある。車を運転中に橋から飛び降りるハインズさんを見た女性がすぐに、沿岸警備隊に所属する友人に電話していたのだ。その連絡がなければ、警備隊はハインズさんの位置をすぐには特定できなかっただろう。

「私はこの橋から落ちて生き残った、1%にも満たない人間の中の1人だ」とハインズさんはいう。たとえ助かっても二度と、それまでのように自由に動くことができない体になる人が多い。「だが、私は人生における2度目のチャンスをいくつも与えられた。だからこそ自殺防止のための活動は私の情熱であり、ライフワークとなっている。人種も信条も、肌の色も関係ない。自殺防止は、あらゆる人の問題だ」と訴えている。(c)AFP