【2月6日 AFP】中国の貧困層の子どもたちが近視になる可能性は、より裕福な家庭の子どもたちに比べて格段に低いとの研究結果が5日、米国眼科学会(American Academy of Ophthalmology)の学会誌「Ophthalmology」に掲載された。この研究は、子どもの近視をめぐり実施された過去最大級の調査結果を基にしているという。

 中国の政府機関や大学の他、米カリフォルニア(California)州スタンフォード大学(Stanford University)の専門家らが参加した今回の研究では、中所得者地域の陝西(Shaanxi)省と貧困地域の甘粛(Gansu)省に住む小学4~5年(9~11歳)の児童を対象に視力検査が実施された。この調査には、陝西省の約9400人と甘粛省の約1万100人の約2万人が参加した。

 その結果、臨床的に有意な近視と診断された児童の割合は、甘粛省で12.7%だったのに対し、陝西省ではその2倍近くの約23%だった。

 論文によると、「中所得者地域での暮らしには、読書時間や野外活動、児童の両親が眼鏡をかけているかどうかといったリスク要因の調整を行った後でさえ、近視のリスクが69%高まることと関連性がある」という。

 論文ではまた、問題を解く際に極度の集中力を必要とする算数が得意であることと近視リスクとの間にも関連性がみられたことが指摘された。さらに近視になる可能性では男子よりも女子の方が高かったという。

 この調査結果について研究チームは、貧困地域の学校で使用されている黒板に近視を防止する効果がある可能性についても考えたが、さまざまなリスク要因調整を行ったところ、関連性は見えなくなったとしている。

 研究を率いた広州(Guangzhou)中山大学(Sun Yat-sen University)中山眼科センター(Zhongshan Ophthalmic Center)のネイサン・コンドン(Nathan Congdon)教授は、「重要なのは、中国の低所得者層の児童たちが近視になりにくい理由を解明することだ。そうすれば、アジアをはじめ世界中の子どもたちの近視を予防するために、同様の戦略を応用することができる」と述べている。

 東アジアの一部の発展地域では、近視人口が急速に増加しており、有病率は80~90%に達している。

 これまでにアジアとデンマークで行われた研究では、屋外で過ごす時間がより長く、自然の太陽光をより多く浴びている子どもたちには、一般に近視が少ないとの結果が示されている。(c)AFP