象牙密売、背後で暗躍する犯罪組織 ケニア
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【2月4日 AFP】2014年5月最後の土曜日、午後11時を前に、ケニアの港湾都市モンバサ(Mombasa)にあるカーディーラーショップに、大量の荷物を積んだ白のトラックが1台入ってきた──。このトラックの荷物は「家具調度品」と申告されていたが、開けてみるとそこには象牙228本と象牙製品74個が積まれていた。総重量は2152キロだった。
5日後、ケニア警察がこのディーラーショップを強制捜索した。そこに居合わせた男らは警察官に500万シリング(約650万円)の賄賂を渡そうとしたが、当局者はこれは拒み、象牙を押収。男らを逮捕した。
大規模な強制捜索で押収量も史上最大級だったが、背後にいる組織の黒幕とみられていたフェイサル・アリ・モハメド(Feisal Mohamed Ali 、46)容疑者の身柄拘束にまでは至らなかった。
国際刑事警察機構(ICPO、インターポール、Interpol)によると、モハメド容疑者は「ケニアの象牙密売グループのボス」と考えられており、世界の「環境犯罪者の最重要指名手配」リストにもその名前が挙がっていた。
モハメド容疑者はその後、隣国タンザニアで逮捕された。一介の密猟者が捕まることはよくあるが、象牙密輸組織のボスが逮捕されることはほぼ皆無だ。そのため環境保護の活動家たちは、モハメド容疑者の裁判で、アフリカとアジア市場を繋ぐ「闇のサプライチェーン」に光が当たることを期待している。
専門家たちは、国際的な犯罪組織が密輸を支配し、アフリカゾウを絶滅の危機に追いやっていると指摘する。国連環境計画(UN Environment Programme、UNEP)とインターポールが2013年に実施した共同調査によると、毎年最大で2万5000頭のアフリカゾウが殺され、密輸による利益は1億8800万ドル(約220億円)に上るとされる。
供給のパイプラインは、アフリカ東部および中部にある自然保護区から始まり、インド洋を臨むケニアとタンザニアで終わる。両国の港湾都市からコンテナ船に隠され、象牙はアジア地域へと密輸される。
現代の密輸は、反社会的勢力のような少数の組織によって行われている。彼らは密猟者にカネを払い、パークレンジャー、警察官、税関職員などには賄賂を渡す。万が一拘束されたとしても、捜査官や裁判官に根回しするだけの資金力を有しているとされる。ある活動家によると、組織では「すべてを円滑に進めるために」影響力のある政治家らに賄賂を渡しているとされ、これにより密輸シンジケートの「安全性」が担保されているという。
アジアとアフリカの犯罪組織は緊密に協力し合いながら、供給元から市場まで、サプライチェーンのすべてをコントロールしている。アフリカのマフィアたちは、アフリカで活動するアジアの犯罪組織のメンバーたちと、より強固な関係を築くようになっている。これらのアジア人らは、アフリカで合法な貿易業を装い、不法ビジネスに携わっているケースも少なくない。