【1月26日 AFP】アルゼンチンで1994年に起きたユダヤ人センター爆破事件の真相の隠蔽(いんぺい)に、現職のクリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(Cristina Fernandez de Kirchner)大統領が関与していたとの証言を議会で行う予定だった検察官が、証言前日の今月18日、自宅で遺体で見つかったことについて、これを報じたジャーナリストが脅迫を受けたとして25日、アルゼンチンから出国した。

 アルゼンチンとイスラエルの二重国籍を持つジャーナリストのダミアン・パクター(Damian Pachter)氏はマイクロブログのツイッター(Twitter)に「無事テルアビブ(Tel Aviv)にいる。皆さんに感謝したい。また話そう」と投稿した。パクター氏はアルゼンチンの英字紙ブエノスアイレス・ヘラルド(Buenos Aires Herald)に勤務していたが、同僚や他のメディアに対し、脅迫を受け尾行されていると語っていた。またイスラエルの日刊紙ハーレツ(Haaretz)にも寄稿していたパクター氏は同僚に、アルゼンチン国内の自分の電話は盗聴されていると語っていた。

 パクター氏はブエノスアイレス・ヘラルド紙に「私の情報源が、状況が変わった、と言えば戻る。(しかし)現政権下ではそれが起こるとは思えない」と伝えたという。

 アルゼンチンの首都ブエノスアイレス(Buenos Aires)では今月18日、約20年前のユダヤ人センター爆破事件の主任検察官を務めてきたアルベルト・ニスマン(Alberto Nisman)検事(51)が、自宅でこめかみに銃弾を受けて死亡しているのが見つかった。翌19日には議会の公聴会で、85人が死亡、約300人が負傷した94年の同爆破事件への関与が取り沙汰されているイラン人高官らを、キルチネル大統領やエクトル・ティメルマン(Hector Timerman)現外相がかばったと証言する予定だった。

 一方、キルチネル大統領は、政府が事件の真相隠蔽に関わったと非難する策略の中で、ニスマン検事は殺害されたと確信していると述べている。

 ニスマン検事の死についての捜査を率いるビビアナ・フェイン(Viviana Fein)検事は現在、DNA照合を含む弾道解析の結果を待っており、遺体から発見された銃弾が、現場で発見された22口径の拳銃と一致するかどうかも検証すると述べた。(c)AFP/Paula Bustamante