■コンピューター対人間

 ゲームで人間を打ち負かしたコンピューターとしては、ポーカーの他にも1994年にボードゲーム「チェッカー」の世界選手権で初めて人間を破ったプログラム「チヌーク(Chinook)」や、1997年に当時のチェス世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフ(Garry Kasparov)氏に勝った「ディープ・ブルー(Deep Blue)」などがある。

 米コンピューター大手IBMが開発した高性能コンピューター「ワトソン(Watson)」は2011年、米国のクイズ番組「ジョパディ!(Jeopardy !)」で優勝した。

 だがポーカーのテキサス・ホールデムは、特に難題であることが判明していた。プレーヤーが2人だけでも、どのカードがすでに相手の手札に入っているかなどの未知の情報が大量にあるからだ。

 米カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)のコンピュータ科学者、トゥオマス・サンドホルム(Tuomas Sandholm)氏は、数多くある「不完全情報ゲーム」のなかでも、ポーカーは人工知能(AI)にとっては最大級の挑戦だと、サイエンス誌に同時掲載された解説記事に記している。

 同氏の説明によると、これらのいわゆる「不完全情報ゲーム」を解決するための一般的手法では、最初にゲーム全体を抽象化して「規模はより小さいが、戦略的に同様なゲームを生成し、均衡発見アルゴリズムで対応可能なサイズにまで縮小する」という。次に、抽象化した各ゲームを解決して均衡または均衡近傍を導き出し、それらの戦略を元のゲームに対応づける。

 ゲーム解決への挑戦は、現代社会に進歩をもたらす助けになるかもしれない。ボーリング氏によると、空港検問所の保安体制の強化、沿岸警備パトロールの向上、医療上の決定の改善などに役立つ可能性があるという。

 このポーカーに利用されたようなアルゴリズムの進歩は、現実世界の不確定性と不明情報を含む状況に対して意思決定を下す場合に、より効果的な解決策を見つける助けになるかもしれないと、論文は結論付けている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN