【6月17日 AFP】(一部更新)米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)の研究チームは16日、人が賭け事や投資を行う時の行動には、遺伝子が大きな役割を持つことが示されたとする研究報告を発表した。

 米科学誌「米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)」に掲載された論文によると、問題の遺伝子は、快楽の信号を発して「報酬を求める動機」とする脳内化学物質のドーパミンの役割に影響を与えるという。

 ドーパミンが社会的交流で役割を持つことはすでに知られているが、研究チームは、遺伝子によって脳内のドーパミンの働きが左右されることが示されたのは今回が初めてだとしている。

「研究は、遺伝子が複雑な社会的行動に関与していることを示している。今回のケースでは、戦略的な行動がそれに当たる」と研究チームは述べる。

 研究では、シンガポール国立大学(National University of SingaporeNUS)の学生217人のゲノムを解析し、およそ70万個の遺伝子多様体を探索し、そのうちドーパミンの調節にかかわる遺伝子12個種に着目した。

 学生たちには、匿名の相手とコンピューター上で賭けをするゲームをしてもらい、その時の脳の様子をMRI画像で調べた。

 その結果、相手の考えを想像し、その行動を予期して対応することに長けた学生には、脳の前頭前皮質内側部でドーパミンの働きに影響を与える3つの遺伝子に変異があることがわかった。

 一方、試行錯誤的な学習を得意とする学生では、主に脳の線条体部分においてドーパミンに影響を与える2つの遺伝子に変異があったという。

 研究チームは、この研究によって、意思決定における遺伝子の役割が、「驚くべきレベルの一貫性で」明白であることが示されたとし、「社会的環境の要素にかかわらず、ドーパミンの働きが、幅広い分野での価値観に基づく意思決定の根底にあるというこれまでの主張をさらに裏付けるものとなった」と述べている。(c)AFP