【1月5日 AFP】先月31日にイタリア沖で、770人近いシリア人を乗せた貨物船が、自動操縦モードで漂流していたところを同国当局に発見された事件で、この船を当初操縦していたシリア人の男が「密航船の船長」となったいきさつを4日付の伊紙に語った。

 イタリア沖で漂流していたモルドバ船籍の貨物船「ブルースカイM(Blue Sky M)」号には、シリア人の不法移民768人が乗船していた。

 伊紙レプブリカ(La Repubblica)が掲載した警察の取り調べ内容によると、伊ガリポリ(Gallipoli)港で拘束されたのはシリア人のサルカス・ラニ(Sarkas Rani)容疑者(36)。イタリア南部沿岸へ向けて船の操縦を自動に切り替えた後、移民の中に紛れるために操縦室を離れたことを認めた。伊海軍が同船に乗り込んだ際には、さらに8キロほど進めば座礁するところで、大惨事になる恐れがあった。

 ラニ容疑者は内戦状態の祖国シリアから隣国レバノンに逃れ、そこからさらにトルコへ移ろうとした際に密航業者に関わるようになったという。トルコへ入ると、船長だった同容疑者の経歴を知っていた人物から接触を受けてイスタンブール(Istanbul)で会い、契約が成立。他の3人の男とともにブルースカイM号に乗せられ、シリア国境に近いトルコのメルシン(Mersin)港まで行った。

 ラニ容疑者が会った密航業者は交流サイトのフェイスブック(Facebook)に広告を出し、欧州までの密航代として1人当たり5000ドル(約60万円)、25人以上のグループの場合は1人4500ドル(約54万円)とうたっていた。同容疑者に対しては「報酬1万5000ドル(約180万円)と、家族全員が渡航できる可能性を約束された」という。

 メルシンの港で「積み荷」を2日間待ち、3日目に最初のグループ30人を乗船させた。その後、次々に人が到着し、昨年12月25日までには800人近くに達した。ブルースカイM号が出港するまで、トルコ当局による立ち入り検査はまったくなかったとラニ容疑者は強調している。またイタリアへ向かう航路は自分で決めたと述べている。

 出港後は悪天候のためにギリシャ沿岸への接近を余儀なくされ、ギリシャ当局に海の荒れがおさまるまで湾内への避難を要請し許可されたが、ギリシャ当局による「積み荷」の確認もなかった。乗船し検査を行わなかった失敗について、ギリシャ沿岸警備隊はAFPにすでに認めている。

 ギリシャ海軍に護衛されてギリシャ領海から出ると、ラニ容疑者はブルースカイM号の針路をイタリアへ向けて自動操縦に設定すると、移民たちの中に身を隠したと述べている。(c)AFP