■コンピューターとの恋愛

 電子メールやカレンダー、位置情報の収集といったスマートフォンからのデータを利用すれば、インターネット上のサーバーは、ある人がある特定の時間と場所で何を好むかなど、「数値化された自分」を別の何かと関連づけて意味づけすることも可能だ。

 エンダール氏は「2010年代中に、ユーザーは身に着けている端末に話しかけ、また端末が利用者に口をきくことになるだろう。端末と結婚したくなるかどうかは別の話で、精神状態の問題だ」と話す。

 エンダール氏の冗談は人気映画『her/世界でひとつの彼女(Her)』を引き合いにしている。舞台を未来に設定した同映画では、ホアキン・フェニックス(Joaquin Phoenix)演じる主人公が、これまでの人生で出会った誰よりも彼のことを理解してくれるコンピューターの基本ソフト(OS)と恋に落ちる。

 調査会社NPDグループ(NPD Group)のアナリスト、ベン・アーノルド(Ben Arnold)氏によると、ウェアラブル端末の普及に欠かせない「キラーアプリケーション」となりえるのは、人々の行動を測定する段階を超えて、分析結果を提供する段階も超え、照明やテレビ、サーモスタット(温度自動調節器)などをインターネット経由でリンクさせて制御するといったユーザーの行動を予測するアシスタントだ。

「午前9時に、私がどれほどバーベキューが好きかを友達と話していたとする。正午になると、午前中に交わした会話を聞いていた私のスマートウオッチは、私がランチのことを考えていると判断してバーベキューを提供する近所のレストランを紹介する。これが目標だ」

 また同氏は、コンピューターに人と同じ方法で思考させるという人工知能分野の開発プロジェクト「ディープマインド(Deep Mind)」を進める米グーグル(Google)が最初の成功例を生み出すことになるかもしれないと推測する。

「アンドロイド(Android)」端末に搭載されたユーザーの望みを予測するソフトウエア「Google Now(グーグルナウ)」は、例えば飛行機の予約確認が記載された電子メールをユーザーが受け取ったことを認識し、リアルタイムの道路交通情報に基づいて、空港へ向けて出発するのに最適な時間をアラート機能によって知らせるなどといったことを、既に実現している。