【1月1日 AFP】ミシュラン星獲得シェフが手掛ける機内食に、ビンテージもののシャンパン──航空各社は、利益性が高いファーストクラスやビジネスクラス市場でのシェア拡大を目指し、乗客の味覚を満たすことに全力を尽くしている。

 アーチェリー・ストラテジー・コンサルティング(Archery Strategy Consulting)のベルトラン・ムリーエグロ(Bertrand Mouly-Aigrot)氏は、「ビジネスクラスは航空各社の主要な激戦市場となっている。利益性が高いこの市場は競争が激しく、客の要望も厳しい」と話す。同社によると、機内食の市場規模は100億ユーロ(1兆4600億円)に上る。

 機内食1食あたりのコストは座席の等級によって異なり、エコノミークラスは5~9ユーロ(約730~1300円)、ビジネスクラスは15~30ユーロ(約2200~4400円)、ファーストクラスは文字通り「天井知らず」だ。

「世界で最も高級なシャンパン2銘柄、ドン・ペリニヨン(Dom Perignon)とクリュッグ・グランド・キュヴェ(Krug Grande Cuvee)を提供する唯一の航空会社」とうたうシンガポール航空(Singapore Airline)は、シャンパンとワインに年間1840万ユーロ(約27億円)のコストを掛け、機内食コストは同社の総コストの5.5%を占める。

 各社はトップシェフを雇うなど機内食に力を入れることで、他社との競争に打ち勝とうと躍起だ。だが、高度9000メートルの上空で、さまざまな国籍の、要求の多い乗客に高級料理を提供することは難しい。

 機内食では、生魚など一部の原材料を使用することができないし、宗教や文化上のタブーも考慮する必要がある。さらに、高度や客室の乾燥状態によって味覚が変化してしまう問題もあるため、通常よりも強い風味に仕上げる必要がある。ケータリング会社セルベール(Servair)のトップシェフ、ミシェル・ニュグ(Michel Nugues)氏は「パンチを効かせるためソースに生姜を加える」という。

 課題はまだある。ミシュラン星シェフの作る料理にふさわしいタイミングとバランスを取るのは地上のレストランでさえ難しい。さらに機内食は、提供の直前に再加熱しなければならない。

 仏パリ(Paris)のシャルル・ド・ゴール(Charles de Gaulle)空港の機内食工場では、何千人もの調理人が、世界中の機内で提供される食事の調理や急速冷蔵の作業を慌ただしく行っている。機内で加熱する際、ほんの数秒の過熱でも風味が損なわれてしまうため、適切な加熱具合に細心の注意が払われる。シェフが自ら客室乗務員を指導することも多い。

 また、機内にはさまざまな国籍の乗客がいるため、バラエティー豊かな機内食も重要なポイントだ。インドの航空会社ジェットエアウェイズ(Jet Airways)の欧州ケータリング責任者、リーベ・ファンノッペン(Lieve Vannoppen)氏は「面白いことに、インド以外の国のお客様はたいていインド料理を好む。一方、インド人は海外の料理を試してみようとする。もちろん、われわれはさまざまな選択肢を用意している」と語った。(c)AFP/Delphine TOUITOU