【12月30日 AFP】インターネットのプライバシー問題は、ユーザーの権利と個人情報の収集のバランスをとることが可能な、広く受け入れられたシステムが不在のまま、向こう10年間も難題であり続けるだろう──このような見通しが、専門家を対象に行われた調査で示された。

 今回の報告書の共同執筆者である米調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)の「インターネットと米国人の生活プロジェクト(Internet & American Life Project)」のプロジェクト責任者、リー・レーニー(Lee Rainie)氏によれば、「信頼できるプライバシーのインフラ」について専門家たちの見解の一致はみられず、専門家らは、オンラインで個人情報の共有が進む中、プライバシーがますます侵害されるとみている。

「人々は友情を深めたりコミュニティーを見つけたり育てたりするために自分の詳細な情報をオンラインで共有する。そして個人情報は知識経済の原材料だ」と、同氏は言う。

 同調査ではテクノロジーの専門家やアナリスト、約2500人に「2025年までに安全で、広く受け入れられ、信頼できるプライバシー権のインフラが構築されているか」と質問。55%が「ノー」、45%が「イエス」と答えた。

 オンラインデータの収集・監視に対する反発が、新たなプライバシー保護手段をもたらす可能性があると答えた専門家もいたが、ほとんどがプライバシーは激論を呼ぶ問題であり続けると答えた。

「多くの人が、効果的なプライバシー権利のシステムを構築するのは不可能だと述べた」と、米イーロン大学(Elon University)イメージング・ジ・インターネット・センター(Imagining the Internet Center)のジャナ・アンダーソン(Janna Anderson)氏は言う。

「政府と企業は、現在進んでいる、個人のプライバシーとデータの所有権にかかわる市民権が失われる状況から得るものが大きく、すでにかなり侵害されている現状を覆す誘因をほとんど持っていない、と専門家らは指摘している。『覆水盆に返らず』と評し、人々はプライバシーの侵害を不可避なものとして受け入れ続けるだろうと述べた専門家もいた」

 米マイクロソフト(Microsoft)の科学研究員のダナー・ボイド(Danah Boyd)氏は「セキュリティーとプライバシーの力学は今後10年間、醜い政治と企業の強欲にはまり込み、めちゃくちゃな状態が続くと予測する」と述べた。

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California Los AngelesUCLA)のリア・リーブロー(Leah Lievrouw)教授は、データ収集は「最も成功しているテクノロジー関連企業のビジネスモデルの中核」を担っており、小売りやヘルスケア、エンターテインメント、メディア、金融、保険などの従来型の業界でもますます中核を担うようになっていると指摘した。(c)AFP/Rob Lever