【11月18日 AFP】交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブック(Facebook)が「フェイスブック・アット・ワーク(Facebook at Work)」と呼ばれるオフィス向けSNSの試験運用を秘密裏に行っていると報じられた17日、ビジネス特化型SNS最大手の米リンクトイン(LinkedIn)の株価は急落した──。

 このフェイスブックの動きについて、「一見、純粋な消費者向けのサービスから企業サービスへ移行しているグーグル(Google)をフェイスブックが追随しているように見えるが、その範囲は未知数」と調査会社フォレスター・リサーチ(Forrester Research)のアナリスト、ロブ・コプロビッツ(Rob Koplowitz)氏は述べる。

 英ロンドン(London)のチームが率いているというプロジェクトをよく知る筋の情報によると、現在は実業界の一部で試験運用されている「フェイスブック・アット・ワーク」は数か月以内に公開される可能性があるという。

「フェイスブック・アット・ワーク」では、「ニュースフィード」や「メッセンジャー」など既存の機能がそのまま引き継がれているが、あくまでビジネスでの使用に限定されているため、個々のユーザーの他のSNSアカウントとはアクティビティや情報は共有されない。

 世界で13億5000万人の月間アクティブユーザーがいるフェイスブックのビジネス特化版は、この分野で地位を確立している他のサービス、米シスコシステムズ(Cisco)のビジネスチャット「ジャバー(Jabber)」、IBMの企業向けソーシャルソフト「IBMコネクション(IBM Connections)」やマイクロソフト(Microsoft)の同「ヤマー(Yammer)」、グーグルが提供しているオフィス向けツールなどにとっては脅威となるだろう。

 中でもフェイスブックにとって、第一の標的となるのは前述のリンクトインだ。リンクトインは求職や求人、キャリアアップを含めた目的のために仕事上でつながり、開拓するためのビジネス特化型SNSの代表的存在だ。

 閲覧履歴などからユーザーの関心に近い広告を配信する「ターゲティング広告」にデータを提供する一般型SNSとは一線を画し、また従業員の生産性を向上させることが可能なSNSであれば、たとえ有料だとしても利用したいという企業は存在するだろう。

 フェイスブックをめぐってはこれまで、個人情報の取り扱いに関する懸念が、ビジネスでの利用を遠ざける一因になっていたと専門家らは指摘する。

 シリコンバレー(Silicon Valley)の調査会社エンダール・グループ(Enderle Group)のITアナリスト、ロブ・エンダール(Rob Enderle)氏は、「プライバシーに関しては、フェイスブックに対する不信感がある。ビジネスはプライバシーの問題には非常に敏感だ。フェイスブックがビジネス特化型SNSを展開するにあたっては、対処すべき課題が山積している」とコメントしている。(c)AFP/Glenn CHAPMAN