現地でエボラ熱の封じ込めに尽力している緊急医療援助団体「国境なき医師団(Medecins Sans FrontieresMSF)」は、感染したリベリア人の3分の2が治療センターに辿り着けずにいると指摘している。救急車が大幅に不足しているうえ貧困が蔓延しているため、病院に向かう足はタクシーしかないことも多い。

 エボラウイルスは、患者がタクシーを降りた後も数時間は感染力を保ち続ける。医療支援団体側はタクシーを殺菌消毒しようと努めているが、エボラ熱を恐れる運転手たちは治療センターの近くに留まりたがらない。

 ペインズビルの「エボラ対策本部」チームは、ウィリアムズさんと接触した人を追跡してきた。チームに所属するピーター・ブリディ(Peter Blidi)氏によると、これまでに5人を特定し、ウイルスの最大潜伏期間である21日間の経過観察下に置いたという。

 同氏は、「当初からこれらの事例を報告していたのに、政府は聞く耳を持たなかった」とリベリア当局の無策ぶりを非難した。ペインズビルに開設されたMSF治療センターのローレンス・セイリー(Laurence Sailly)所長も、救急車の出動の遅さを批判し、政府は「基本的な輸送管理」さえできていないと指摘した。

 4日に危篤状態にあることが発表されたダンカンさんは、たとえ治癒しても、リベリア出国の際に健康状態について虚偽申告をした疑いで同国当局に訴追される恐れがある。

 そのリベリアも、国家として「危篤状態」にある。首都北西のボミ(Bomi)郡では4日、医療スタッフ2人がエボラ出血熱で死亡したことを受けて2つの診療所が閉鎖に追い込まれた。(c)AFP