【4月22日 AFP】デザイナーのジミー・チュウ(Jimmy Choo)が18日、東日本大震災で被害を受けた福島の素材や工芸技術を使って制作した靴の限定コレクションを公開した。

 チュウは、2011年の震災で起きた原発事故からの復興を目指す福島周辺の工場を訪問後、今回のコレクション制作を思いついたという。さらに、会津木綿や川俣シルク、会津漆器など、福島に数百年に渡って受け継がれる伝統工芸があることを知ると、これらを使って靴を作れるのではないかと考えた。

「250年に渡って続く伝統や工房の様子、そして生地などを見て、これらが非常に貴重なものであると感じました」とチュウはAFPに語った。「彼らはこの独特の素材から美しい生地を生み出します。ですが生地の織り方を知ってはいても、その職人技や美しい生地を世界の人に堪能してもらうことがどれほど重要なことか、気付いていないと思いました」

 チュウの靴は、英国王室の人々から歌手のマドンナ(Madonna)、ミシェル・オバマ(Michelle Obama)米大統領夫人まで多くの人に愛用されているが、靴はチュウにとって履き物以上の意味を持つと語る。「もちろん靴は靴ですが、私にとっては芸術品なのです。ですから買った人が必ずしも履く必要はありません」

 チュウは、自分が福島で見た真の職人技は、原発事故によっていまだ数万人の人が帰還できずにいる地域の現状を好転させる力を持っていると思うと語った。

 制作した6足のハイヒールは展示された後、地元の団体に寄付される予定だ。チュウは自分の取り組みが、福島近郊の才能ある職人たちの支えとなり、彼らの未来を切り開く足掛かりになることを願うと語った。「彼らに資金を渡しても、それはやがて底をつくでしょう。ですが、技を継承できれば、それは残り続けるのです。技があれば、自分でビジネスを始め、人を雇い、工場を立ち上げることもできます。そうして、街の経済活動を回復させることができるようになるのです」(c)AFP