■考えられるシナリオはわずか

 2001年9月11日の米同時多発テロ事件後、国際民間航空機関(International Civil Airline OrganisationICAO)は操縦室に関する保安基準の厳格化を命じており、防弾構造になっている操縦室の扉は、機体がゲートから離される前に内側から施錠することになっている。

 シンガポールの工科大学テマセク・ポリテクニック(Temasek Polytechnic)のポール・ヤップ(Paul Yap)講師(航空学)は「考えられるシナリオは2~3しかない」と語る。

「まず考えられるのは、操縦室にいた操縦士のうちの1人、あるいは2人が共謀して意図的な行動を取ったのではないかということだ。次に考えられるのは、テロリストらが乗客を殺害するなどと操縦士らを脅迫し、飛行経路を変えさせ、トランスポンダー(応答機)のスイッチを切らせたということだ」

 MH370便のトランスポンダーは、機体が巡航高度に達しただろうとアナリストらが指摘している時刻の前後にスイッチが切られたとみられている。操縦士らは大抵、このタイミングで休憩を取るため操縦室を出る。米同時多発テロ事件の実行犯らは、ハイジャックした航空機4機のうち3機のトランスポンダーのスイッチを切っていた。