【3月7日 AFP】恋人を射殺したとして殺人罪などに問われている南アフリカの両足義足のランナー、オスカー・ピストリウス(Oscar Pistorius)被告(27)の公判で6日、被害者のリーバ・スティンカンプ(Reeva Steenkamp)さん(当時29)に必死の救命活動をする被告の痛ましい様子を目撃者が証言し、被告は両手で耳をふさぎ涙を流した。

 証言台に立った隣人で放射線科医師のヨハン・スティップ(Johan Stipp)氏は、事件当時、ピストリウス被告の家に入った経過や、取り乱した被告がかがみ込んでスティンカンプさんの蘇生を試みていた様子を詳しく語ると、被告は被告席で座ったまま耳をふさぎ、体を前後に揺らした。

 スティップ氏は、スティンカンプさんが右大腿部と右上腕部に傷を負っていた上、頭部の上には「血や髪の毛、さらに脳の組織と思われるものがまざりあって」いたと述べた。この恐ろしい光景から、生存の可能性はないだろうと思ったという。

 スティップ氏が証言を続ける中、スティンカンプさんの遺族や友人が腕を取り合いながら辛い表情で傍聴。法廷にはすすり泣きの音が響き渡った。

 さらにスティップ氏は「蘇生可能かどうか私が確かめている間、オスカー(・ピストリウス被告)はずっと泣き続け、彼女を生かしてほしい、死んではならないと神に祈っていた」「祈りの中で、その日、彼女を死なせずに生かしてさえくれれば、自分と彼女の人生を神に捧げるとも言っていた」「傷は深すぎて、私には何もできなかった」などと証言した。

 また、スティンカンプさんの遺体を置いてピストリウス被告が2階に上がったのを見たときには、被告が被告自身を危険にさらすのではないかと心配し、銃のありかを突き止めたいと思ったと述べた。「オスカーは非常に取り乱していて、私は家の中の状況が分からなかったので、彼が自分自身を傷つけるんじゃないかと思った」という。

 スティップ氏による生々しい証言の間、ピストリウス被告は何度も泣き出し、何度も頭を押さえた。

 閉廷の際には、被告は非常に動揺した様子だった。弁護士が荷物をまとめている間、黒い服を着た妹のエイミー(Aimee Pistorius)さんが被告席に近づいて一緒に座り、腕を被告の肩に回していた。(c)AFP/Stephanie FINDLAY