【11月28日 AFP】ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相の保守系与党、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と中道左派の社会民主党(SPD)は27日、大連立政権を樹立することで合意した。合意にはSPDが求めていた最低賃金制度の導入などが盛り込まれた。

 メルケル首相は9月の総選挙で3期目の続投を決めたが、CDU/CSUは過半数の議席を獲得するには至らず、SPDと5週間にわたる連立協議を続けていた。

 キリスト教民主同盟(CDU)党首のメルケル首相は、キリスト教社会同盟(CSU)およびSPDの党首と共に記者会見に臨み、26日から日付をまたいで17時間に及んだ連立協議の成果を発表し、喜びもあらわに「ドイツの重要課題を解決する重要な連立」を歓迎すると述べ、「2017年には人々の生活が今よりも改善する可能性が高まった」と語った。

 185ページの連立協定書には、ワーキングプア対策としてSPDが要求していた、2015年初頭から時給8.50ユーロ(約1180円)の最低賃金制度を導入することが盛り込まれた。一部の業界と地域ではさらに2年かけて段階的に導入する。SPDのジグマル・ガブリエル(Sigmar Gabriel)党首は「この合意は、公平性を回復し、失われてしまった社会のバランスを取り戻すためのもの」と述べ、連立協定調印を「非常に嬉しく思う」と述べた。

■富裕層増税は盛り込まず

 この他に、上場企業での一定割合の女性役員登用の義務化、トルコからの移民が多いドイツで大きな問題になっていた欧州連合(EU)域外から来た住民への二重国籍の容認、年金保険料を45年間払い込んだ人の年金支給開始年齢の63歳への引き下げ、教育と社会基盤への投資の拡大、2035年までに総電力需要の55~60%を再生可能エネルギーでまかなうという目標の設定などで合意したが、富裕層への増税や、新年度から政府の債務を増やすことについてはメルケル首相が最後まで受け入れず、連立協定には入らなかった。

 CDUの姉妹政党でバイエルン州だけを支持基盤とするCSUは、以前から主張していた、EUの規則に合致する限りにおいてドイツの高速道路アウトバーンを走る外国人ドライバーから通行料を徴収する政策を合意文書に盛り込ませた。

■SPDの党員投票 見通し不透明

 メルケル首相は12月17日にも就任宣誓を行いたい意向だが、12月14日に開票が行われるとみられるSPD党員による連立承認投票の結果を待つ必要がある。ガブリエルSPD党首は、半数を優に超える党員が連立に賛成するだろうと自信をみせている。

 だが、伝統的に労働者の支持を集めてきたSPDでは、連立政権に入れば2005~09年の前回の連立時と同じように、強力なメルケル首相の影で存在感を失う恐れがあると考える党員も多く、承認投票の見通しは不透明だ。SPDは前回の連立後、総選挙で2回連続して大敗する屈辱を味わっている。

 ベルリン自由大学(Berlin Free University)のゲロ・ノイゲバウアー(Gero Neugebauer)氏(政治学)は、「はっきり言えば、CDUは政権が欲しく、CSUは道路通行料が欲しく、SPDは党員から叩かれるのを避けたい」と述べ、連立合意は各党が有権者に対して成果を挙げたと言えるような内容になっていると説明した。(c)AFP/Deborah COLE