【11月21日 AFP】キリエ・ボニフェスちゃんは生後わずか数時間、予定よりも7週間早く夜明け前、台風30号(アジア名:ハイエン、Haiyan)で壊滅的被害を受けたフィリピン・レイテ(Leyte)島タクロバン(Tacloban)の設備の整っていない、超満員の病院で生まれた。

 保育器のない中で赤ちゃんの体温を下げないようにするため、24時間シフトで勤務する看護師たちは、キリエちゃんをビニールで包んだ。

 疲れ切ったキリエちゃんの母親、21歳のエミリーさんは、隣室の床に敷かれたむき出しのマットレスの上で、いとこに見守られて横たわっていた。

「私は幸せ」と、エミリーさんは涙を拭きながら語った。「でも(これからも)大変」

 現在、タクロバンで患者を受け入れているのは東ビサヤ地域医療センター(Eastern Visayas Regional Medical Center)だけだ。

 建物は被災を免れた。しかしすでに手一杯の状態の同病院には、治療を必要とする人が押し寄せている。

 詰め込むように床に敷かれたマットレスには授乳中の母親たちが横たわったり、暑さのため十分な睡眠がとれない乳幼児のために段ボールの切れ端で風を送ったりする姿がみられた。利用可能な空間はすべて使用済みで、廊下に並べられたベッドには女性とその子どもたちが所狭しと座っていた。

 看護師歴24年のラメスさんは、AFPが取材に訪れた日に同病院の36人の新生児を世話していたわずか4人の看護師のうちの1人だ。ラメスさんによると、終日のシフトが終わると、24時間の休憩をして、その後また勤務に就く。11月8日の台風直撃以降、ずっとそれが繰り返されてきた。(c)AFP/Huw GRIFFITH