【10月24日 AFP】世界で唯一、女性に自動車の運転を禁じているサウジアラビアで、女性活動家たちが運転の解禁を求める活動を本格化させている。女性の運転禁止にサウジ当局が、より穏健な手段で臨む姿勢をみせる中、既に規則に逆らって運転席でハンドルを握る活動家も出ている。彼女らは「運転は女性の選択肢の1つ」とのスローガンの下、来る26日に予定している抗議行動への参加をネット上で呼び掛けている。

 2011年5月に運転する自身の映像をネット上で公開して逮捕され、当局に9日間拘束された経験を持つマナル・シャリフ(Manal al-Sharif)さん(34)は、「10月26日はサウジの女性たちが、自分たちは運転に本気だ、この問題は絶対に解決すべきと声を上げる日になる」と話す。

 現在はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)でコンピューター・エンジニアとして働くシャリフさんによると、既に呼び掛けに応じた女性たちが運転中の自らの姿を撮影した動画をネットに投稿しており、その数は直近の2週間で50件を超えたという。

 これまでのところサウジ当局は、警察に一時停車を求められた女性2人の例を除けば、運転中の女性の車両を強制的に停止させるような実力行使には出ていない。

 こうした状況が社会に広がる女性の運転を許容する雰囲気と相まって、多くの女性たちに国内の公道を車で走ってみようと勇気を出させている。

 今月にも、首都リヤド(Riyadh)で家族と男性運転手らが親指を立てて賛意を示す中、全身をベールで覆った女性が自動車を運転する様子を撮影した動画がネット上に投稿された。

「女性たちに運転を認める布告を当局が発令するまで、こうした抗議行動は11月26日、12月26日、そして1月26日にも続く」とシャリフさんは話す。

 ただ、不測の事態を避けるため、抗議行動への参加は海外で自動車免許を取得した女性に限っている。もちろん、サウジ国内で女性に免許が交付されたことはない。

■未発達な交通網や経済的な理由も

 一方、サウジアラビアでも保守的な聖職者たちは、いまだ女性への運転解禁に反対している。

 先月にも同国のイスラム聖職者協会(National Council of UlemaMUI)のメンバーで、元最高司法評議会(Supreme Judicial Council)トップのサレハ・ルハイダン(Saleh al-Luhaydan)師が、自動車の運転は女性の健康にとって危険であるとの見解を示し、ネット上で発言への批判が相次ぐという出来事が起きた。

 ルハイダン師はこの時、地元報道局のウェブサイトへの投稿で、「『生理学』の研究で車両の運転が女性の卵巣に影響を及ぼし骨盤を押し上げることが分かった」とし、「運転を続ける女性が生んだ子どもたちのほとんどが、様々なレベルの臨床的疾患に苦しんでいる」と述べていた。

 こうした意見に対してある女性活動家は、キャンペーンに関連して行われたネット上での請願活動で「預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)の随行者の妻たちも、ラクダや馬に乗って旅をしていた。同様に現代の移動手段である車を運転することは、私たちの権利です」と反論している。

 9月に始まった女性の運転解禁を求める請願活動は、開始からわずか2週間で停止させられたものの、1万6000人分の署名が集まったという。

 活動家たちが女性の運転解禁を主張する理由は、ほかにもあるという。サウジアラビアでは現在も公共交通機関が十分に発達していないうえ、運転手を雇う余裕のない家庭も数多いと、活動家たちは指摘する。

 抗議行動キャンペーンのウェブサイトには、「給料は3500リヤル(約9万円)なのに、運転手を雇う費用は1200リアル(約3万1000円)もかかる」と嘆く離婚経験女性の投稿が掲載されている。

 現在、サウジアラビアの女性たちは頭から足下まで全身を覆うことが求められるほか、旅行、就職、結婚にも男性後見人の許可を必要とする。(c)AFP/Acil TABBARA