【10月4日 AFP】米国でこのほど特許が認められた遺伝子関連技術をめぐり、ドナー提供された精子や卵子を選別して生まれてくる赤ちゃんの目の色などの遺伝形質を自分好みに操作できてしまうとして、欧州の生命倫理学者らが警鐘を鳴らしている。

 問題とされているのは、遺伝子サービスを提供している米企業「23andMe」の「gamete donor selection(配偶子ドナー選別)」と呼ばれる技術で、米特許商標局(US Patent and Trademark OfficeUSPTO)が9月24日に特許申請を承認した。USPTOウェブサイトには、この技術について「配偶子(精子または卵子)の提供を受ける側がドナー(提供者)を選ぶ際に、より多くの情報を参照できるようになる」と説明している。

 しかし、3日の医学誌「ジェネティクス・イン・メディシン(Genetics in Medicine)」に掲載されたベルギー、オランダ、フランスの医療倫理学の専門家らによる論評は「23andMe」の特許技術について「卵子・精子の提供を受ける親の希望する特徴を備えた子供が生まれるよう、ドナー候補が選別対象とされる可能性が高くなる」手法だと批判。提供を受ける親たちが「買い物リスト」から選べるようになる遺伝形質には、背の高さや目の色、筋肉質かどうか、性格、がんなどの遺伝子疾患リスクが含まれかねないと指摘した。

 特許申請書類に添付された資料には、卵子や精子の提供を受ける親たちは「できるだけ寿命が長い子が欲しい」「医療費ができるだけ少なくて済む子がいい」といった選択肢のほか、「短距離走者になる可能性100%」なども選べると示唆している。

「23andMe」は、希望した遺伝形質の子供が生まれるチャンスを高める技術にすぎず結果を保証するものではないと注記しているが、「ジェネティクス・イン・メディシン」論評は、子供の健康と無関係の特徴を選べる点で「倫理的に非常に問題がある」と評している。

「23andMe」によると、問題の技術は5年以上前に特許申請したもので「Family Traits Inheritance Calculator(家族遺伝形質計算機)」というツールが対象。目の色や苦みの感じ方、牛乳アレルギーの有無など、生まれてくる子供の特徴のうちどれが自分から遺伝したものかをこのツール上で調べる方法を親たちに提供するための技術だが、特許申請時には不妊治療に活用する可能性も視野に入れたため、表現がより幅広いものになっただけだという。(c)AFP