【1月27日AFP】イナゴは窒素濃度の低い痩せた土地で育った植物を好み、過放牧地に集まる傾向があるとした研究結果を26日、米中の共同チームが米科学誌サイエンス(Science)に発表した。

 イナゴが大発生する年には、アジアやアフリカを中心に地球の地表面積の20%にイナゴがいる計算になり、世界の10人に1人が生計手段に被害を受けているという。

 イナゴの大群が発生する原因の解明は進んでいない。このため、米アリゾナ大(University of Arizona)と中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の共同チームは、イナゴの大発生を促す要因を突き止める実験を行った。実験にはアジアに多いイナゴ2種のうちの1種、「Oedaleus asiaticus」を使った。

 イナゴはタンパクを多く含む植物を好むと予想した研究チームは、昆虫はより良い食料源を探すという理論に従い、中国の内モンゴルにある中国科学院植物研究所で、植物のタンパク質を増やす窒素肥料を畑の区画にまく実験を行った。ところが、窒素肥料を豊富に与えた植物を食べたイナゴは死んでしまうか、成長が通常のイナゴよりも遅くなった。

 さらに野外観察や、異なる餌を使った研究室内での実験を重ねて、研究チームはイナゴが低タンパク、高炭水化物の餌を好んで食べることを発見した。低タンパク、高炭水化物の植物は通常、過剰な放牧によって養分が枯渇した土地にみられる。

 論文の共著者ジョン・ハリソン(Jon Harrison)氏は「これらの実験から、イナゴにとってタンパクが豊富すぎる餌は有害なことが分かり、放牧をしすぎた土地でイナゴが大量発生する理由が示された」と述べている。

 また主著者のアリアン・シーズ(Arianne Cease)氏は、イナゴは生き残るために枯渇した環境への適応力を身につけただけでなく、こうした環境下でさえ繁殖する可能性もあると指摘。「動物種はそれぞれの栄養応答の中で劇的に変化するという理論に、われわれの研究結果はあてはまっている。イナゴが特に低タンパク・(高)炭水化物を好む傾向は、過放牧が進んでしまった世界で彼らが繁殖している理由を説明するものだろう」と語った。

 研究チームは、農薬に代わる安価で手軽なイナゴ対策として、将来的には牧草地への窒素肥料散布が考えられると提案している。(c)AFP