【10月30日 AFP】世界の公式人口はこの4半世紀足らずの間に20億人も増加し、来る10月31日に70億人に達しようとしている。今後も何十億人かの増加が見込まれる中、環境的破滅を回避できる道は唯一、資源利用の革命だけだと専門家たちは言う。

 この60年で世界の出生率は約半分に減った。現在、女性1人当たりの子どもの数は平均2.5人だ。しかし、この値は実は国によって大きく異なる。地球人口が最終的に安定するのは90億人なのか、100億人なのか、150億人なのかはアフリカを中心とする人口増加の速い開発途上国にかかっている。

■2030年までに第2の地球が必要?

 人類は増加するごとに、地球の資源をむさぼってもきた。米環境NPO、グローバル・フットプリント・ネットワーク(Global Footprint NetworkGFN)の試算によると、現在のペースでいけば、人類の欲望を満たし排出物を吸収するためには、2030年までに第2の地球が必要となる。繁栄を支える化石燃料の使用に伴い温室効果ガスも排出し、気候変動によって、われわれの糧を生み出している地球の生態系自体をも破壊しようとしている。

 2012年6月に行われる「国連地球サミット」(通称:Rio+20)の調整役の1人、仏外交官ブリス・ラロンド(Brice Lalonde)氏によると、人口増加によって、資源の利用方法は根本からの挑戦を迫られている。「2030年までにもう10億人増えるだろう。数十億の貧しい人びとのために、いかに食糧安全保障を向上し、基本的な公共サービスを提供しつつ、それを水や土地、エネルギーの利用を増やさずにできるかが問題だ」

■出生率抑える家族計画が鍵

 出生率に歯止めがかかっていることで、世界人口は80億人程度で安定し、ひいては貧困国は救われ、天然資源への負担は減り、気候変動に対する脆弱性も抑えられるのではないかという専門家もいる。
 
 自発的な受胎調節が鍵となるという主張もある。米調査研究機関、ウッドロー・ウィルソン国際センター(Woodrow Wilson International Center for Scholars)「環境の変化と安全保障プログラム」のディレクター、ジェフ・ダベルコ(Geoff Dabelko)氏は、女性が避妊手段を得られない場合の例としてソマリアを挙げる。

 内戦と貧困に苦しめられながら、現在約1000万人のソマリア人口は、2050年までに2260万人に達すると予想されている。出生率は国別で8番目に高く、1世帯平均の子どもは7人だ。

 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)によると、内戦が本格化する以前の段階で、すでにソマリアの子どもたちの3分の1は低体重だった。一方、既婚のソマリア人女性の99%は家族計画に接する機会がない。

 一方、解決の道は貧困抑制と教育の向上にあり、特に女性の教育が重要だと主張する経済学者たちもいる。2010年のコロンビアの研究によると、家族計画によって下がった出生率はわずか10%足らずで、出生率低下の大きな要因は、生活の質の向上だった。

■国際会議でタブー化している人口問題

 そうした中、地球の未来を形作るはずのさまざまな国際会議では現在、真っ向から人口増加に触れることはほとんどタブーだという。

 過激な行動で知られる環境団体「シー・シェパード(Sea Shepherd Conservation SocietySS)」のポール・ワトソン(Paul Watson)代表は、その変化をこう語る。「ストックホルム(Stockholm)会議(1972年国連人間環境会議)に出席した時の1番の議題は、人口増加の制御不能状態についてだった。けれど、1992年のリオの会議(国連環境開発会議、地球サミット)に出た時には、それは議題に挙がらず、もう誰も話題にさえしていなかった」

 人口統計に関する議題は同様に、地球人口が60億に達した2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD、ヨハネスブルク・サミット)でも不在だった。「地球の限界は何人か」という問いがなぜ、世界のサミットの場で不在なのだろう。

 理由のひとつは、宗教的な保守派による避妊や中絶への反対だ。政治家たちも、頭痛の種にしかならない一方で、実際に起きるのは何十年も先の問題に取り組むことに、利益を見出さないのだろう。

 しかし、一部で警告があるように「人口対策」とは、1970年代のインドで実施された強制避妊術や中国の「1人っ子政策」のような過ちと同意語で、男児偏重による人口の不均衡を招きかねない。(c)AFP/Marlowe Hood and Richard Ingham


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